67歳男性。
16年前から糖尿病の診断を受け内服薬治療をしていたが,2年前から自己判断で内服を中止し,それ以後,病院には通院していない。
11月15日,急にに左第5趾が腫れて痛くなって歩けなくなり,翌日,近所の内科クリニックを受診し,当科を紹介された。
当科初診時,左第5趾MTP関節部足底側に皮下膿瘍を認めたため切開排膿した。直ちに,糖尿病内科にも紹介したが,血糖値 428,HbA1c 11.9%であった。
切開排膿後,痛みはなくなり,普通に歩けるようになった。11月22日の診察時にも異常はなかった。
11月27日に急に左足が痛くなって足趾が黒くなり,28日に受診。壊死組織を認め,壊死組織の切除を行った。同時に,下肢動脈の急性閉塞を疑い,血管外科にも紹介したが,この時点では下肢動脈に異常はなかった。
11月29日には痛みはなくなり,壊死した第5趾をMTP関節部で切除。30日には普通に歩けるようになった。
12月2日,左第1趾が急に黒くなり,救急外来を受診。
12月3日,当科を受診し,切開し大量の排膿をみた。この時点で,足底にも組織壊死と膿瘍形成を認めた。下腿切断が必要と説明したが,切断を望まず,下腿潰瘍の専門科がある〇〇病院での治療を希望し,転院となった。
11月16日 | 11月16日 | 11月19日 | 11月28日 |
11月29日 | 11月29日 | 11月30日 |
12月3日 | 12月3日 | 12月3日 |
このような「自己管理の悪い糖尿病患者」については,打つ手が無いことが多い。切開排膿で一時的に小康状態になるが,数日後にはまた悪化し,再度,切開排膿をすることになり,やがて全身状態も坂を転げ落ちるように悪化する例が多いような気がする。恐らく,局所の治療以前のレベルの問題なのだろう。
もしかしたら,早期に下腿高位での切断をすべきだったかもしれない。
【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/154/index.htm】