39歳女性。
 9月21日に北海道旅行中にコーヒーで全胸部に熱傷。現地の病院で見てもらい,翌日帰京して自宅近くの皮膚科を受診。10月3日から知人の奨めで都内の「ヤケドは私費診療でなければ治らない。1日1万3千円で,毎日通院が必要」と宣伝している●●医院を受診し通院しているが,あまりの治療費の高さに支払いできなくなり,ネットで調べて当科を受診した。
 当科ではプラスモイスト(R)で治療を行った。

10月12日 10月19日
黒い斑点は毛孔からの上皮化
10月22日

11月2日
斑点が拡大し,癒合していく
11月9日 12月7日
次第に目立たなくなってきた


 さて,上記の「私費診療でないとヤケドはならない」医院はこのシリーズで2度目か3度目の登場となる。秘伝の軟膏を3〜6ヶ月塗らないと傷はきれいにならない,と患者に説明(=洗脳)し,毎日通院させ,1万3千円をふんだくっているらしい。商売のモデルとしては見事だと思う。

 そして実際,この秘伝の軟膏を半年間塗ってもらうと,ヤケドは本当に目立たなくなる。これはその軟膏を塗ったからだろうか? どこにトリックがあるかお分かりだろうか。

 答えは「何もしなくても6ヶ月後には大多数のヤケドは目立たなくなる」である。つまり,軟膏を塗っても塗らなくても,半年後にはきれいになるが,患者は「この軟膏を塗ってもらったおかげで目立たなくなった」と思うから,治療に感謝するというわけだ。
 同様のトリックは「リザベン内服による瘢痕の治療」でも使われる。リザベンは3〜半年間内服させるが,リザベンを内服しようとしまいと,半年も経てば瘢痕は落ち着いてきて目立たなっくなる。それをリザベンを処方した医者は「リザベンを飲ませたからきれいになった。やはりリザベンは瘢痕の特効薬だ」と勘違いするわけだ。

 これは要するに,日食の知識がある宣教師が,知識のない現地民に「もうすぐ太陽が消えるであろう」と予言し,その予言通りになったので神様扱いされる,というのと同じパターンだ。
 知識がある者がない者を騙すのは,大昔から実に有効なビジネスモデルなのである。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/122/index.htm】

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