これは3度熱傷?


 50代女性。脳梗塞の既往があり半身麻痺がある。
 7月4日,熱湯で右足背に熱傷受傷。同日,当科を受診。足背全体に及ぶ熱傷を認めた。水疱膜は既に破れていて,残っている水疱膜をすべて除去した後に,白色ワセリンを塗布したプラスモイストを貼付した。以後は痛みなどはほとんどなく経過したが,7月10日頃に発熱と創部の痛みを訴え,抗生剤の点滴を行っている。この頃から創面全体が白っぽくなり,筆者自身は3度熱傷だと考えた。


7月4日 7月7日 7月10日


 さて,この症例は3度熱傷でしょうか?・・・・・アンケート結果

 では,その後の経過です。

7月15日
足背遠位に皮膚の島が出現
7月31日
新たに小さな島が2つ出現


8月4日
2つの島が広がってきた
8月7日
島の領土がどんどん広がり,周辺の大陸と癒合


8月14日 8月22日


9月1日
あと1週間くらいで完治でしょうか。拘縮はなく普通に歩行。


 アンケート結果:湿潤治療をしていない医師の半数,湿潤治療をしている医師の3割がが3度と診断しした。


 この症例からわかったこと

  1. 全層壊死と思われたところでも,4週間経過すると皮膚の再生が始まる。
  2. 6週目でも新たな「皮膚の島」が出現している。このような現象は,旧来の熱傷治療の教科書には書かれていない。
  3. つまり,受傷後6週目までは「これは3度熱傷」という診断はできないというであり,ここでも旧来の熱傷治療の常識は全く通用しない。
  4. しかも,保存的に上皮化させても,普通に動かしながら(=日常生活をさせながら)上皮化させれば瘢痕拘縮は生じない。つまり,安静にすると瘢痕拘縮が生じ,安静にしなければ瘢痕拘縮は起こらない。ここでも,旧来の熱傷治療の常識は全く通用しない。
  5. 海のど真ん中に島が出現し,その周囲に次第にサンゴ礁が広がり,やがて一番近い大陸と繋がり島は大陸の一部になる,というイメージで熱傷が治癒していくことがよくわかる経過写真である。
  6. 創内に小さな「上皮の島」が出現すると急速に治癒に向かう。


 さて,この症例の経過についてご感想がありましたら,「項目追加」に書き込んでいただいて結構です。

(2008/09/09)

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