ここは3度熱傷?


 非常に得意な経過を辿った熱傷症例である。

 症例は女子中学生。熱湯で左下腿のほぼ全周の熱傷で,直ちに当科を受信した。

初診時の状態(1月25日) 1月26日

 下腿は広い範囲で水疱形成が認められ,直ちにすべての水疱膜を除去し,ワセリンを塗布したラップで被覆した。受診痔はかなり強い痛みを訴えていたが,ラップで覆ってからは痛みが軽くなり,歩いて帰宅。
 翌日も診察したが,2度の浅い熱傷と思われ,治療方針と方法,湿潤治療の原理については両親に説明し,自宅でもラップを交換してもらった。


1月31日 2月6日

 ところが,1月31日,強い痛みを訴えて受診。前日,部活(バスケットボール)に顔を出したところ,部活の先生に「痛くないんだったらランニングくらいできるだろう。練習をサボっちゃ駄目だ」といわれ,素直に数時間,練習をしたらしい。そして帰宅してから激しい痛みに襲われたようだ。
 1月30日の診察時にはきれいな肉芽で覆われていたが,31日の時点で肉芽面はまだらになり,一部は灰白色になっていた。局所の感染症状はなかったが,とりあえず抗生物質を点滴し,鎮痛剤を処方した。局所の治療は「ワセリンとラップ」を続けた。

 しかし,この日を境に局所の状態は徐々に悪化し,2月6日の時点で,白〜灰白色の部分が拡大し,創の頭側部分には幅1.5センチ,長さ8センチにわたって「創離開」のような状態になった。原因は全く不明。痛みは依然として強く,洗っても痛みを訴えた。

 ちなみにこの部活の顧問は「ちょっとヤケドをした程度だろう」と思っていたらしい。全くもって,余計なことをしてくれたものである。


2月9日

 @の部分はさらに拡大し,Aの部分は依然として肉芽の色が悪く陥凹している。それ以外の部分も白っぽく,通常の2度熱傷の肉芽の状態と異なっていた。この時点でも痛みのために,患部を洗えなかった。熱傷でこのように痛みが続いた例はほとんど経験がない。


 @の部分は2度熱傷でしょうか,3度熱傷でしょうか? ちなみに私は3度熱傷と診断した。

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 では,どこに「上皮の島」が出現し,それがどのように拡大していったのか,ご鑑賞ください。

2月15日 同日:ちょっと拡大
@の全体に「上皮の島」が出現しているの,わかりますか?


2月19日
@の全体で上皮化が急速に進行
2月26日


3月5日
Aにも「上皮の島」が出現
3月12日
そして,ほぼ完治

コンパクトデジカメで「接写,ストロボ」で撮影すると
しょうもない写真しか撮れないという
良い(?)見本である


3月26日


 この症例の経過についてご感想がありましたら,追加していただいて結構です。・・・・・アンケート結果

(2008/09/16)

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