熱傷の創感染を防ぐための方策として,私は次のような方法を取っている。
これだけで過去2年間,熱傷で発熱する例がなくなった。
このうち,「ゼリー状の膜の除去」にはちょっとしたコツがあるため,写真つきで説明する。
まず,症例の提示。30代の男性。熱湯による左足内側の熱傷。3日目までは異常なく経過したが,4日目(4月25日),創部の疼痛で受診。
5月25日 創周囲の発赤と腫脹を認める |
ゼリー状の膜を除去 結構な厚みがあることがわかる |
除去したらプラスモイストを貼付 |
ゼリー状の膜を除去してプラスモイストで被覆し,内服の抗生剤を処方した。
5月28日 | 5月31日 |
翌日には痛みはなくなり,6日後に完治した。
このゼリー状の膜は全例で形成されるが,どうやら薄い場合には感染せず,厚い場合に感染を起こしているような印象を持っている。感染の成立機序としては次のようものを想定している。
膜を除去といってもどうすればいいかわからないと思うので,熱傷ではないが厚いゼリー状膜が覆っていた症例の写真で説明。
手背の全層皮膚欠損 厚いゼリー状の膜で覆われている |
無鉤鑷子を滑らすように挿入し,開く | 後は摘まんで除去。 出血させてまで取る必要はない。 |
肉芽と膜の間を滑らせるようにそっと入れると,全く痛みなく挿入できる(無鉤鑷子だと先端が丸いので痛くない)。ある程度入ったらそこで鑷子を開くと剥げるように膜が持ち上がるので,その部分の膜を除去。これを何度か繰り返すだけである。無鉤鑷子でなく細いペアンでもいいだろう。
すべての膜を除去する必要はなく,ドレナージ用の穴を開ける感じで何箇所か除去するだけでも感染予防には効果があるようだ。
(2008/09/18)