下腿難治性潰瘍


 症例は85歳男性。45年前に交通事故で左下腿の複雑骨折を受傷し,以後,左下肢は不自由である。
 8ヶ月前に左下腿外側に傷ができ,某皮膚科医院に半年間通院して軟膏治療(カデックス,アクトシンなどだったようだ)を受けていたが潰瘍が次第に拡大してきた。その後,別の病院を受診し,当科での治療を進められ,7月3日に受診した。
 高齢ではあるが,特に基礎疾患はなく,足が不自由なことを除けば元気な方である。

7月3日 7月17日 8月12日

 初診時,10×7センチの下腿潰瘍を認めた。患者と家族に湿潤治療について説明し,OpWT(穴あきポリ袋+紙オムツ)での治療を開始した。高齢であり通院も大変とのことで,通院は週に1回とし,家族の方にドレッシング交換していただくこととした。

 治療開始して1週間後,肉芽の色は良くなり,何より痛みがなくなったということで喜ばれたが,8月12日では9×6センチとやや縮小した程度であり,上皮化はなかなか進まなかった。肉芽収縮を期待してステロイド含有軟膏も使用したが奏功しなかった。


 さて,このような場合,皆様はどうしますか?・・・・・アンケート結果


 その後も良くも悪くもならない状態が続いたが,9月3日,患肢の蜂窩織炎を起こして入院となり,数日間抗生剤点滴を行い,蜂窩織炎の状態は治まったが,創の状態に変化はなかった。
 抗生剤は蜂窩織炎には有効だったが,創傷治癒の遅延を改善してくれなかった。

 9月15日,さしたる根拠もなく,被覆材をOpWTからプラスモイストに変更してみた。経験的に,なかなか治らない潰瘍で被覆材を変えたらなぜかよくなる例がたまにあることを知っていたためだ。

9月3日 9月16日 9月22日 9月29日

 その後は,なぜか順調に上皮化が進み,9月29日には完治してしまった。軟膏も外用剤も使わず,VACも高圧酸素療法も使わずに,被覆材を変えただけである。

 それにしても,OpWTからプラスモイストに変えたことで何が変化して一気に創傷治癒が進んだのだろうか。このあたりがうまく説明できないのだ。創面の水分量とか酸素分圧とか,そういうのが作用しているのだろうか。


 

(2008/10/06)

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