創の上皮化がストップしたら
上皮化がストップする原因は幾つかあり,現時点では私は次のような要因を考えています。
- 過剰肉芽(創面より盛り上がっている肉芽)になり,盛り上がった部分に上皮が侵入できない。
- 肉芽の状態(水分量,浸出液の性状など)が表皮細胞の分裂に最適の状態でない。
- 肉芽にかかる緊張が強く,肉芽の筋線維芽細胞の収縮力,表皮細胞の分裂がそれに追いつかない。
- 肉芽の下の潰瘍底が瘢痕化していて肉芽が血流不全になっている。
このうち,@とAは表裏一体のものかもしれません。
- 1に対してはステロイド軟膏が著効します。肉芽に軟膏を塗布するのでなく,プラスモイストやハイドロサイトに軟膏を塗布し,それで肉芽を覆います。
- 2の場合は外科的デブリードマン(=肉芽の切除)をしてアルギン酸塩に被覆,その後はプラスモイストなどで被覆するのが近道です。状態の悪い肉芽を除去してよい肉芽を新たにあげるという方針です。
- 3は若い人の大腿や前腕,関節の伸側で上皮化が遅れる場合でしょう。これはひたすら様子を見るしかありませんが,上皮化に長い日数がかかっても瘢痕拘縮を生じることはほとんどありません。むしろ,途中で植皮をすると,移植皮膚の収縮により瘢痕拘縮を生じます。
- 4は肉芽の色が悪く,肉芽面が全体に陥凹しています。この場合は,肉芽とその下の瘢痕の切除が必要です。
要するに,「上皮化がストップ」といっても原因は一つでなく,それに応じて対策は変わります。
1に対するステロイドすが,ステロイドの肉芽収縮作用が効果を発揮するので,通常は強い作用を持つステロイド軟膏の方が効果が高いです。そして,過剰肉芽が収まったらステロイドの使用は中止します。漫然と使うと,再生上皮に悪影響を与えるようです。
(2008/05/21)
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