頭皮外傷のドレッシング
頭皮外傷のドレッシング(創面の被覆)についてまとめる。まず最初に,頭皮裂創・挫創・擦過創の筆者の治療方針は次の通り。
問題はその後の創のドレッシングである。髪の毛が邪魔で絆創膏固定も包帯固定もできないからだ。
だが、結論を先に書くと、頭皮外傷にドレッシングは原則的に不要なのである。しかし,不要とは言っても、何もしないでは患者さんが納得しないだろうから次のような「なんちゃってドレッシング」をすればいいのだ。具体的な方法は縫合創を例に取ると次のようになる。
- 縫合後、創部にガーゼを当てて5分くらい圧迫する(患者さん自身に圧迫してもらう)。
- 止血確認後、患者さんに「実はガーゼって出血を吸い取るだけのものなんですよ。血が出ていなければ実はガーゼは要らないんですよ」と説明し,その説明に対する患者さんの反応から,次のどれにするかを決める。
- 小さく折ったガーゼを創部に当て、ヘアピンでガーゼを毛髪に固定。「寝ている間に取れちゃったらそのままにでいいですよ。血が出ていなければ当て直す必要はありませんよ」と説明。要するに「なんちゃって固定」である。
- 禿髪の患者さんは普通にガーゼを当てて絆創膏固定し,「寝ている間に取れちゃったらそのままにでいいですよ。血が出ていなければ当て直す必要はありませんよ」と説明
- ガーゼを渡し、「もしも出血したらまた押さえて下さい。数分で出血は止まりますよ。多少の出血は心配入りませんよ」と説明。
- 白色ワセリンかゲンタシン軟膏を処方し、「傷が乾燥しないように何度も塗って下さい」と説明する。
- 翌日、診察して異常がないことを確認し、ドレッシングが不要である旨を説明し、「もう髪を洗ってもいいし,傷は髪の毛で隠すようにします。1週間後に抜糸しますからその時までは来なくていいです。何か異常があったらすぐに来てね」と説明。
要するに、縫合後のドレッシングの役目とは「出血を吸い取る」以上でも以下でもないのである。無菌ドレッシングで縫合創を清潔に保ち感染を防ぐ、なんていう大昔からの言い伝えは嘘っぱちなのである。だから、出血がなければそもそもドレッシングそのものが不要となるわけだ。
なお,「縫った傷にガーゼを当ててもいいの? ガーゼを当てると乾燥するんじゃないの?」と疑問に持つ人もいるかもしれないが,「傷を乾燥させてはいけない」はすりむき傷やヤケドなどの皮膚欠損創の治療の原則であり,きちんと縫合されている縫合創には皮膚欠損はないため通気性の物(=ガーゼ)で覆っても問題は生じないのだ。
(2011/04/20)
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