症例は60代後半の女性。
5月末に右下腿を打撲し,擦過創を受傷。打撲部は腫れていたが痛みはなかったため,自宅で経過を見ていた。その後,打撲部の皮膚が黒変し痛みも出てきたため,6月4日,近くの整形外科クリニックを受診し,血腫除去と壊死組織除去を行った。6月9日,当科を紹介され受診した。
右下腿遠位外側に直径7センチの皮膚軟部組織欠損を認めた。
湿潤治療の原理と方法について説明し,OpWT(穴あきポリ袋+紙オムツ)で創部を被覆した(左記リンク先は鳥谷部先生のサイト)。抗生剤や外用剤の投与は行わず,患部は水道水で洗うのみとし,「痛くない程度に歩くのは構わないが,長時間の立ち仕事は止めてね」と説明した。
全経過を通じて創感染は起こらなかった。
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6月18日の写真では創周囲に発赤がみられるが,これは創感染によるものでなく(=局所の痛みがなかったため),滲出液による接触皮膚炎であり,ステロイド軟膏を使いながらOpWTを続けることで消退した。滲出液は創にとっては治療薬だが,創周囲の皮膚からすれば余計ものであり,長時間の接触で皮膚炎の原因となる。
(2011/09/26)