爪甲脱臼を伴う末節骨開放骨折の治療法


 60代男性。前日の夜,重い家具を左第1趾の上に落として受傷。翌日,当科を受診した。爪甲脱臼,爪甲裂傷ではほとんどの場合,末節骨骨折を伴う。

爪根部脱臼あり 末節骨末端部の骨折あり


 局所麻酔後に抜爪。爪床裂傷を認め,爪床裂創の場所は末節骨骨折部位に一致している。すなわち「開放骨折」である。
 直ちに 4-0 か 5-0 の吸収性縫合糸で爪床裂傷を縫合する。これで末節骨の骨折も整復される。縫合後の爪床はアルギン酸塩被覆材を貼付し,フィルム材で密封する。

開放骨折を伴う爪床裂創 吸収糸で縫合


 医療用の熱可塑性プラスティック「プライトン」でシーネを作成。プライトンは強度を持たせるために2枚重ねにして70℃のお湯に入れて圧着する。土踏まず〜MTP関節部に当ててフィットさせて形を整えた「近位のパーツ」と,足趾(この例では第1,第2趾を一緒に固定した)の形に合わせた「遠位のパーツ」を別々に作り,接合部分を再度温めて一体型シーネにした。
 これを足底側に合わせ,絆創膏固定する。この状態で痛みがなければ歩行は自由とする。

プライトンでシーネ作成
2つのパーツを結合させた状態
足底に装着 絆創膏で固定


 このシーネは外すのも固定し直すのも簡単なので,私の外来では2日目から入浴時には外して風呂に入って患部も洗ってもらい,風呂から上がったら自分でプラスモイストで創部を被覆し,プライトンを付け直してもらっている。
 通常は2週間を経過したらMTP関節より遠位のみの固定としている。また,3週間で固定は不要となり,普通に歩行させている。

 なお,手指・足趾の指節骨骨折では化骨は出現しない。つまり,レントゲン写真を目安に骨折の癒合を判定することは不可能である。手指,足趾骨折の場合には,3〜4週間固定し,動かしても痛みがなければ骨癒合したと考えてよい。


 熱可塑性プラスティックは70℃の温度で柔らかくなり,自由に曲げたり伸ばせるようになり,冷やすと固まる性質を持つ。また,温め直すと再度柔らかくなり,何度でも再利用可能である。今回使用したプライトンは楽天で一般の方も購入できるようだ。

 同様に,東急ハンズでは熱可塑性プラスティック「自由樹脂」が販売されている。12色あり,いろいろな物が作れて楽しい商品である。以前私は,埋没耳の治療にこれを使っていた。

(2012/02/10)

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