犬咬傷による下腿皮膚軟部組織欠損


 72歳女性。知人宅の飼い犬に左下腿を噛まれ,直ちに当科を受診した。

 下腿後面遠位部に狭い茎を持つ皮弁状の広範な裂創を認め,下腿の半周に及ぶ大きさだった。また,皮弁側に厚く皮下脂肪がついていた。
 直ちに皮弁側の皮下脂肪を可及的に切除し,ナイロン糸数本をドレナージ用に留置して皮膚を縫い戻し,皮弁全体を軽く圧迫固定した。抗生剤は PIPC 1g を1回だけ点滴投与し,その後は経口の抗生剤を3日間投与した。

 創部に感染症上は認められなかったが,皮弁は次第に血流不全から虚血壊死に陥り,1週間眼ころに全層壊死となった。しかし,局所の感染症錠(発赤と疼痛)を認めなかったため,プラスモイストTOPで被覆して,壊死組織の自然融解を待ち,積極的な外科的デブリードマンは行わなかった。また,歩行・入浴も特に制限しなかった。

 壊死組織は10日ほどで総て融解して創面から剥離し,なくなった。その後はプラスモイストで覆うのみとし,68日目ころにほぼ上皮化した。
 瘢痕形成は軽度であり,瘢痕拘縮は認められず,歩行障害もない。

初診時 皮弁状の皮膚を縫い戻す 2日後

7日後 13日後 27日後

43日後 51日後 68日後

(2012/04/06)

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