某病院形成外科を受診して「褥瘡」と診断されましたが、褥瘡ではなくII度熱傷であり、湿潤療法にて治癒した一例をご報告させていただきます。
症例は81歳女性。2012年4月下旬、電気アンカを下肢にあてていて左踵部に水疱が形成された。様子を見ていたが改善なく水疱がやぶれたため2012年5月中旬に某病院形成外科受診、「これは褥瘡だから。簡単には治らない。」と説明、ゲンタシン軟膏+ガーゼにて治療開始となった。
脳梗塞後で軽度の認知症はあり、糖尿病でインスリン自己注射をしている患者さんでしたが、ADLは完全に自立しており、褥瘡ができるような寝たきりの患者ではまったくなく、褥瘡という診断に疑問・不信感をもった家族がネットで検索し5月30日当科初診された。
初診時、左踵部に褐色調の壊死部を伴う創面を認めた。II度熱傷(DDB)と思われた。以後プラスモイスト+ワセリンで治療開始。壊死組織が厚く覆っており6月15日壊死組織を局所麻酔下に切除。
その後もプラスモイスト+ワセリンを続け、7月27日ほぼ上皮化した。
それにしてもなぜ寝たきりでない歩行可能な患者の低温熱傷を褥瘡と診断したのでしょうか?
うがった見方をすれば、高齢で脳梗塞後・認知症・糖尿病があって手術適応にならなさそうな熱傷は、褥瘡ということにしようと判断したのではないかと思ってしまいます。
逆に、そういう判断をするのならば、患者さんがこちらに流れてきますので、あとはこちらで治療させていただきますからいいです、と言えますね。
5/30 | 6/8 | 6/13 | 7/6 |
7/13 | 7/20 | 7/27 |
この患者さんのポイントは,患者さんの家族が,「自力で歩ける患者に床ずれができるわけないだろ! この医者,ボケてんじゃないのか?」という的確な判断ができた点にあります。少なくとも,某病院形成外科医より「床ずれとは何か」について正確な知識を持っているわけです。だから,この医者の嘘が見抜け,「こんなボケ医者になんて任せられない」と,ネットで調べて「任せられる医者」のもとを受診したのです。
医者が適当に口からでまかせを言って,それで患者をだまくらかせていた「古き良き時代」は過ぎ去ろうとしています。それに気がついていないのは,この形成外科医です。
患者に見放されたくなければ,医者が勉強しなければいけないのに,医者の方にそういう危機感がありません。おめでたいとしか言いようがありません。
(2012/08/06)