症例は74歳男性。糖尿病,慢性関節リウマチで他院に通院していた。9月28日から左足背に腫脹があり,抗生剤投与で改善しないため,10月2日に当院を紹介され,直ちに入院となった。10月5日,当科紹介となる。なお,左第2趾はリウマチのために初診時から変形していた。
当科初診時,左足背遠位中央と外側に白色壊死を認め,それを切開したところ大量の膿の流出があった。痛みが直後から解消し,ループ状ナイロン糸でドレナージ可能と判断し,ループ状ナイロン糸とOpWT(穴あきポリ袋+紙おむつ)で創部を被覆した。
しかし,10日間治療を続けても状態はあまり改善せず,近位部に波動を触れるようになったため,10月15日に切開して開放創にし,17日にも追加切開を行った。切開直後はアルギン酸塩被覆材で創面を被覆して止血し,翌日からは水道水洗浄とOpWTで被覆した。抗生剤はこの頃からは投与していない。
10月5日 | 10月15日(10日後) | 10月17日(12日後) | 10月19日(14日後) |
以後,炎症症状(腫脹と発赤)は速やかに消退し,問題なく経過した。10月下旬に退院となり,以後は週1回の通院とした。創部の被覆はOpWTのみで行った。
10月22日(17日後) | 10月31日(26日後) | 11月8日(34日後) | 11月15日(41日後) |
11月29日(55日後) | 12月6日(62日後) | 12月27日(83日後) | 1月8日(95日後) |
こういう症例(複数の瘻孔があり,瘻孔同士が皮下ポケットでつながっている)では,中途半端な切開ではなく,思い切って全て切開して開放創にした方がいいようだ。この症例では最初の10日間,切開の必要性は自覚しつつ,その決断がなかなかつかなかった。10月6日か7日頃切開していれば,10日速く退院できたと思うと,患者さんにちょっと申し訳ない思いである。
(2013/02/2)