切断を勧められた指の壊死が復活


 33歳男性,福島県在住。2013年1月4日,業務用の蕎麦打ち機に右環指を挟んで外傷受傷。近くの某病院整形外科で治療を受けているが,指が壊死しているため切断が必要と言われた。
 当サイトの「壊死から指復活」の症例を知り,一縷の望みをいだいて1月15日に福島県から受診された。

 初診時,指の状態を診察し,次のように考えた。

  1. 恐らく degloving injury (手袋を脱ぐように皮膚がズル剥けになる外傷) で,それを単純に縫い戻したのだろう。
  2. その後,ガーゼで覆うのみだったため乾燥により壊死した。
  3. degloving injury だとすれば皮下組織の損傷はひどくないはず。
  4. 掌側で壊死しているのは degloving した皮膚のみで,壊死組織がその下の軟部組織の乾燥を防いでくれているため,それより深くは壊死していない可能性が高い。
  5. 屈筋腱さえ露出しなければ何とかなるはず。pulley 露出だけなら大丈夫。
  6. 指背側の壊死範囲は狭いので,伸筋腱露出は多分ないだろう。
 

 創部はボックス型プラスモイストで覆い,処置方法を説明して1週間に1度の通院(何しろ福島から東京ですからね)とし,何か異常があったらすぐに受診してもらうこととした。

 壊死組織は積極的に切除せず,融解して自然に浮いてきた部分のみ切除した。全経過を通じて創感染は起きなかった。2月中旬には指が再生することがほぼ確実になり,積極的にDIP関節の屈曲練習をさせた。

1月15日 1月15日 1月22日 1月22日 1月29日 1月29日

2月5日 2月5日 2月12日 2月12日 2月26日 2月26日

3月19日 3月19日 4月9日 4月9日

4月23日 4月23日 指の長さはわずかに短い程度
指尖部の形態も良好
DIP関節のROMはほぼ正常
患指の機能障害はなく,仕事に復帰している

(2013/04/30)

左側にフレームが表示されない場合は,ここをクリックしてください