ティファール社製電気ケトルによる熱傷例のまとめ


  1. 患者さんは受傷年月日順に並べています。
  2. 大学病院で軟膏治療を受けた患者のみ,大学病院名を併記しています。
  3. ティファール電気ケトルによる治療経験をお持ちの先生は,是非,治療経過などを教えて下さい。
  4. ティファール電気ケトルの構造的欠陥
    • 日本製電気ポットは
      • 電気コードが磁石接続なので力が加わるとコードが外れてポットは倒れない
      • 倒れても熱湯が出ない構造になっている
    • ティファール電気ケトルは
      • 電気コードが外れず,ケトルは倒れて落ちてくる
      • 倒れたら必ず熱湯が外に出る構造になっている


  1. 【6歳6ヶ月女児】
     2012年4月23日,テーブルの上においてあったティファール電気ケトルのコードに引っかかってケトルが落下し,熱傷受傷する。直ちに獨協医科大学形成外科に救急搬送され入院となる。入院後は軟膏とガーゼの治療を受け,5月25日に退院。
     傷跡があまりにひどいため,もっと目立たなくできないかとネットで治療法を探し,同年11月に当科を受診。
    2012年11月21日

  2.  大阪市淀川区で「熱傷の湿潤治療」に熱心に取り組んでいただいているこおりた ひろ整形形成外科クリニックの郡田大宇先生の症例です。
     【31歳女性】 職業ダンスの先生
     平成24年8月3日 ティファール社製電気ケトルが倒れ、右下腿に熱湯がかかり受傷。近医受診し消毒、ガーゼ処置。その後、皮膚科を受信したが,消毒、ガーゼ処置を受け,「植皮が必要、治るには半年かかる、踊るなんてもってのほか」 と説明を受けた。
     その説明に納得がいかず、受傷3日後、当院受診。

     もちろん踊って頂きながら、2週間で奇麗に治りました。  写真掲載の許可は頂いております。ご本人のブログです。
    8月7日 8月10日 8月23日

  3. 【11ヶ月女児】
     2012年10月15日,ティファール電気ケトル類似商品が倒れ,中の熱湯がこぼれ出て左手に熱傷受傷。自宅近くの皮膚科・美容外科クリニックを受診し,獨協医科大学皮膚科を紹介され,以後は同科に通院して軟膏とガーゼの治療を受けた。
     傷跡がひどく,もっときれいに治せないかとネットで調べ,2013年1月に当科を受診。
    2013年1月23日

  4. 【1歳7ヶ月女児】
     2012年11月8日,自宅でティファール電気ケトルが倒れてきて溢れだした熱湯で右半身に熱傷。直ちに当科に救急搬送された。プラスモイストのみで治療した。
    2012年11月8日 2013年1月8日

  5. 【6歳3ヶ月女児】
     2012年12月6日に自宅でティファール電気ケトルをひっくり返して両大腿に熱傷受傷。日本大学板橋病院に救急搬送され,翌日から同院皮膚科で軟膏ガーゼによる治療を受けていたが,あまりに痛がるために別のクリニック(「ヤケドは保険診療ではきれいに治らない。きれいにヤケドに治すためには私費診療しか方法がない。一日1万円かかります」と説明している目白の某有名クリニックね)に通院し,軟膏治療を受けた。
     インターネットで検索して保険診療でもヤケドがきれいに治ることを知って愕然とし,知人から当科を受診するようにアドバイスを受けたこともあり受診。
    2012年12月14日 2012年12月28日

  6. 【1歳4ヶ月男児】
     2012年12月22日,自宅でティファール電気ケトル類似製品が倒れて中の熱湯が溢れだし,右足に熱傷。直ちに当院救急外来を受診し,ワセリンとラップで処置を受けた。12月25日に当科初診。以後はプラスモイストで治療した。
    2012年12月25日 2013年1月11日

  7. 【2歳3ヶ月男児】
     2012年12月29日,ティファール電気ケトル類似商品をひっくり返し,こぼれ出たお湯で右前腕に熱傷受傷。直ちに当院救急外来を受診し,プラスモイストで処置を受けた。1月4日に当科初診。
    2013年1月4日 2013年1月10日

  8. 【10ヶ月女児】
     2013年1月末,自宅でティファール電気ケトルが倒れて右足に熱傷。東京慈恵会医科大学附属 柏病院形成外科に救急搬送され,入院となった。入院中は軟膏とガーゼの治療で,3月末に退院。
     ひどい傷跡が残ったためネットで熱傷治療について調べ,4月に当科を受診した。
    2013年4月24日

  9. おかだ小児科医院の岡田先生の治療例です。
     2013年3月に受傷したティファール熱傷の方が本日受診され、写真の公開の許可を得ました。
     【1歳1ヶ月】
     子どもの手の届かない高さにコードが垂れないようにおいていたそうです。背を向け台所仕事をしていたところ、突然の物音と鳴き声に振り向いたところティファールが床に落ちてその横で子どもが泣いていたとのことです。
     救急受診した病院から、皮膚科のある病院を受診後、受傷2日目にネットで検索した当院を受診されています。
     初診時、II度熱傷でお湯でもあり二から三週間で上皮化すると予想していましたが、1ヶ月たって上皮化せず、本日55日目でも一部上皮化しておりません。されに肥厚性瘢痕が出現してきました。ステロイド軟膏塗布し、完全上皮化後はドレニゾンテープをと考えています。福田先生などの経験から数年後にはほとんど分からなくなることが期待されます。

     しかし、正しい湿潤療法をしていて、お湯でここまで長引き酷くなった例は初めてです。ティファール熱傷は100度近いその温度と大量のお湯のため曝露時間が長いことによりより重症化しやすいのではないかと考えています。
    3月16日 3月18日 3月25日 4月12日 4月24日 5月8日
     ティファール社製電気ケトルによる熱傷でも,沸騰したての熱湯と,ちょっと時間が経って温度が低くなりかけてのものでは,熱傷深度は当然異なるでしょうね。そして,最初の数日間の前医での治療内容も最終結果に影響を及ぼします。
     岡田先生が治療しても肥厚性瘢痕が残ったということは,恐らく私が治療しても同じでしょう。
  10. 【8歳男児】
     2013年3月28日,自宅でテーブルの上においてあったティファールの電気ケトルのコードに足を引っ掛け,落ちてきたケトルの熱湯で右手に熱傷受傷。自宅近くの某医療センターに救急搬送された後,ネットで湿潤治療を知り,翌日当科を受診。プラスモイストのみで治療を行った。
    2013年3月29日 2013年4月12日

  11. 公立富岡総合病院 外科の門脇 晋先生からの投稿です。以下,門脇先生からのメールです。
     ちょうどティファールポットによる熱傷症例を外来でfollowしておりましたため、写真を添付致します。患者さんには許可を得ております。熱傷を初診から最後までfollowした経験があまりないため、ティファールポットによる熱傷特有の所見があるかどうか判断できませんが、先生のお役に立てれば幸いです。

     症例は74歳男性。
     2013年4月3日に自宅のティファール電気ケトルを落下させ受傷。左大腿と右下腿を受傷、ワセリン+ラップで加療しました。
    順調に上皮化しています。黒い点々は毛根?なのかはっきりしません。日常生活には全く困っていない状態です。もうしばらくfollowする予定です。
    4月3日 4月3日
    4月9日 4月9日
    5月1日 5月1日
     5月1日の写真にある黒い点々は門脇先生がお考えのように「毛孔から上皮している状態」そのものであり,「毛孔から上皮化する」という何よりの証拠写真です。やがて,この黒っぽい点々が広がり,癒合して全体に広がりますが,直射日光に当てないようにしていれば,特に治療をしなくても1年くらいで自然に周りの皮膚に近い色調に落ち着きます。つまり,焦らなくていいです。ビタミンCも特殊な軟膏もリザベンもヒルドイドも不要です。
  12. 【1歳1ヶ月男児】
     2013年4月19日,両親と宿泊していた神戸市内のホテルに備え付けられていたティファール社製電気ケトルのコードに引っかかってケトルが倒れ,左下肢全体に熱傷受傷。直ちに近くの救急病院を受診。翌日,神戸市内の総合病院皮膚科を受診し,入院治療が必要と言われた。ゲーベンkリームを処方された。
     祖父が光が丘に住んでいたこともあり,4月23日に当科を受診。当科では直ちにゲーベンkリームを洗い流し,プラスモイストで被覆。それまで左足を動かそうとしなかったが,プラスモイストでの被覆後からハイハイをするようになり,4月25日からはつかまり立ちするようになった。
     なお,5月9日の段階でも足背に小さな潰瘍が残っているが,両親の仕事の関係で渡米するため,これで最後の診察とし,アメリカではハイドロコロイド被覆材の貼付を続けてもらうこととした。
    4月23日 4月23日 5月9日 5月9日

  13. 【34歳女性】
     2013年4月23日,旅行先の韓国のホテルでティファール社製電気ケトルを倒して右大腿~下腿に熱傷受傷。直ちに地元の病院を受診し,軟膏治療を受けた。その後,ネットで調べて湿潤治療を知り,ラップを当てておいて帰国した。ラップで覆うようにしてから激痛がなくなったとのことである。
     当科ではプラスモイストで被覆した。5月2日,上皮化が得られ,通院終了となった。
    4月26日 4月30日 5月2日

  14. 【25歳女性】
     2013年4月29日,自宅で床に置いてあったティファールの電気ケトルを倒し,両足にヤケド。直ちに当院ER受診。右足背は発赤のみだったが,左は大きな水疱ができて破れていた。翌日,当科を受診。以後はプラスモイストで治療した。
    4月30日 5月1日 5月13日

  15. 【5歳1ヶ月女児】
     2013年5月12日,ティファール社製電気ケトルのコードに引っかかり,ケトルが倒れて両大腿に熱傷受傷する。自宅近くの某皮膚科形成外科クリニックに通院していた。しかし,治療についての説明が一切なく,今後の見通しについても全く説明がないため不安になり,ネットで熱傷治療について検索し,5月17日に当科を受診。
     両側大腿内側を中心とした熱傷で,前医ではアロアスク(R)のように見える治療材料で創面が覆われて固着していた。直ちにキシロカインゼリー(R)を塗布してラップで覆い,数分かけて固着していた治療材料を軟化させた後に除去した。その後はプラスモイスト(R)で被覆した。

  16. 【右大腿部(初日のみ後方から撮影している)
    5月17日 5月20日 5月24日 6月3日

    【左大腿】
    5月17日 5月20日 5月24日 6月3日

  17.  こおりた ひろ整形形成外科クリニックの郡田大宇先生からの症例報告です。
    【4歳4カ月,男児】
     2013年5月17日,ティファール社製電気ケトル類似商品のコードに足を引っ掛け、ケトルが倒れ熱湯がかかり受傷。
     救急病院受診。軟膏、ガーゼの治療を受け、抗生剤を処方されたが,湿潤療法をしている医療機関を探し、同年5月18日に当院受診。
     当院受診時、感染傾向認められない為に、抗生剤は中止。ハイドロ救急パッドにて治療。
    5月18日 5月18日 5月18日
    6月1日 6月1日

  18. 伊藤内科の伊藤欣朗先生の症例です。
    【60代の女性】
     2013年6月8日夜にティファール社製電気ケトルが倒れて熱傷を受傷され、広島市内の救急病院を受診し,ゲーベンとガーゼの処置をうけました。6月9日に当院をインターネット経由で受診されました。
     実は,この方のお孫さんも数年前にティファール電気ケトルでで顔に熱傷を受傷されていて,看護師をしている娘さんがネットで調べて当院を受診されていました。
    2013年6月9日:初診時 2013年6月26日
    6月26日:右前腕 6月26日:右大腿 6月26日:左大腿


  19. 【9ヶ月男児】
     2013年6月16日,テーブルの上に載せていたティファール社製電気ケトルのコードに引っかかり,落ちてきた電気ケトルの蓋が外れてこぼれた熱湯で熱傷受傷。直ちに日本医大〇〇病院に救急搬送され,20日まで入院。祖母が湿潤治療について知っていたため,湿潤治療についてネットで調べて聖マリアンナ医科大学病院形成外科を受診したが,軟膏ガーゼの治療だったため通院しても無駄と考え通院しなかった。
     自宅近くの調剤薬局でプラスモイストを購入した際,当科受診を薦められ,6月24日に当科を受診。既に前腕は上皮化していたが,上腕にやや深めの創が残っていたため,ズイコウ ハイドロコロイド包帯で被覆した。前腕はワセリンを塗布して乾燥を防ぎ,遮光するように説明した。
    6月24日:上腕 6月24日:前腕

  20. 【26歳男性】
     2013年6月18日夜,ティファール社製電気ケトルでお湯を沸かしてカップ麺を作ろうとしてお湯が一度に出てカップが倒れ,右手背~母指・示指間に熱傷受傷。翌日,当科を受診。水疱形成を認めた。
    6月19日 6月19日

  21. 9ヶ月男児。2013年7月12日受傷。
     詳しい経過はにしぼり整形外科 西堀先生のブログをお読みください。
  22. 1歳7ヶ月男児。2013年8月6日受傷。
     母親の実家に遊びに行って,ティファール電気ケトルのコードにつまづき,ケトルが倒れてお湯が噴き出し,左足に熱傷受傷。直ちに近くの病院で処置をしてもらった後,インターネットで調べて当科を受診した。
     当科ではプラスモイスト(R)で創部を被覆し,以後は,自宅近くの湿潤治療をしている小児科クリニックで治療継続となった。
    8月7日

  23. 18歳男性。2013年8月26日受傷。
     座卓の上においたティファール電気ケトルのコードに引っかかり,ケトルが落ちて蓋が開き,右足に熱傷受傷。翌日,当科を受診。
    8月27日

(2013/06/18)

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