アテローマに硝酸銀？　2009/06/30(Tue)／投稿者： ○○

感染性アテローマを切開排膿したあと、アテローマ内腔に硝酸銀を押し当てている医師がいます。これって効果あるのでしょうか？
普通に内腔からモスキートなどで被膜を除去するなり，あとで根治手術するなりすればいいと思うのですが。。。

• 2009/07/01(Wed)／投稿者： 夏井＠管理人
  > 感染性アテローマを切開排膿したあと、アテローマ内腔に硝酸銀を押し当てているようです。
  
  私もこれまで，いろいろな「トンデモ治療」を見てきましたが，「アテローマに硝酸銀」というのは見たことも聞いたこともありません。
  もちろん，切開して中身を出し，アテローマの被膜をちょっと引っ張れば簡単に取れます。被膜は周囲の組織との結合性は弱いので（特に，炎症が強い場合は結合性は極めて弱いようです），硝酸銀を使う意味はないと思います。
  
  恐らく，この先生が若い頃に先輩医師が硝酸銀を使っているのを見て，「アテローマは硝酸銀で治療するものだ」と脳みそに刷り込んでしまい，その知識が修正されないまま数十年維持されているのでしょう。
  
  
• 2009/07/01(Wed)／投稿者：
  >若い頃に先輩医師が硝酸銀を使っているのを見て
  
  それが、今までは切開後のアテローマに対してそんな事やらなかったのになぜか最近になって突然やりだしたのですから、これが不思議なのです。。。
  
  でもまあどっちみちやる必要はありませんよね。

第35回熱傷学会総会　 2009/06/06(Sat) ／投稿者： くろ@名古屋

熱傷学会総会が終りました。
「炎の陶芸家」なる方が講演されていたのは、熱傷学会だけにシャレにならないと思われましたが、とてもよいお話でした。

僕自身は「私はこうしている」という主要演題の中で、広範囲熱傷に対するOpWTについての紹介と実演を行いました。従来の抗菌剤軟膏ガーゼ療法と比較して、創感染率は増えず、むしろ減少傾向であったことを示したところ、それなりの反響があったように思われます。熱傷学会で発表するのは初めてで、袋叩きにあうことも覚悟していましたが、杞憂でした。

同じセッションでは熱傷のラップ療法についての演題を出されている先生もいらっしゃいましたし、消毒は患者さんに痛みを与えるだけで何のメリットもないので水道水で洗浄するべきだと主張されている先生もいらっしゃいました。

形成外科の先生の中には少々苦言を呈する方もいらっしゃいましたが・・・

来年もさらにOpWTの症例を増やして発表できればと思います。

熱傷学会に参加された先生がいらっしゃいましたら、コメントしていただけるとうれしいです。

• 2009/06/07(Sun)／投稿者： たけ＠血管外科
  くろ先生
  
  熱傷学会、お疲れ様でした。先生の発表、素晴らしかったです。質問もさせて頂きました。mizu先生と、発表が終わってからくろ先生に声をかけようと話していたのですが、ちょっと見つけきれませんでした。
  さて熱傷学会についての感想ですが、いまだに消毒が必要と言われている某K大学の発表には閉口しました。低濃度の酢酸入りの消毒薬を使うと、熱傷部から何かがぽろぽろ落ちて無茶苦茶いいそうです。何が落ちているかの質問に対しては、「何か分からないけど無茶苦茶いい」と繰り返してのたまっておられました。 mizu先生と、垢が落ちてるだけじゃないのと話しました（とても怖くていえませんでしたけどね）。
  「私はこうしている」：実技付きの発表で確かに盛り上がったセッションかもしれませんが、くろ先生とmizu先生以外の発表は受け狙いが多くとても全国学会における発表と呼べる代物ではなかったように思いました。劇を見にきたわけではありません（特に大学病院からの発表は明らかに受け狙いでした）。地方でやる研究会ではいいかもしれませんがね。
  また特別講演で熱傷ガイドライン作製についての発表がありましたが、3年かけて作ったガイドラインだそうですが、内容に乏しすぎると思ったのは僕だけでしょうか。それなのに、しっかりゲー○ンクリームだけは何故か推奨度Bでした。こんなことに3年かけるぐらいなら、もっとすることがあるのではないでしょうか。褥●学会のガイドラインも対したことありませんが、まだラップ療法のシンポをするだけいいように思えます。
  超早期手術が必要って、いらないデブリをしてそこに植皮しているだけのように見えましたが、形成外科医でない私が見るからそう見えるのでしょうか。
  ラップに対しての発言としては、私が地方会でシンポジストとして発表したときにフロアから「ラップ療法なんて偽医者、偽看護師のすることだ」と貴重な発言をして頂いた某大学の先生がまたまた出てこられ（よほどラップがきらいなんでしょうね）、「ラップ療法で死亡例が出たので気を付けるようにという内容を発表に入れるべきだ。死亡例があったことは認識していないが，ラップをして半年間治癒傾向のない症例があった（発言者本人より修正希望あり）」と言ってありました。mizu先生も少し冷静さを失われて議論されていたようです。
  このあとmizu先生からの書き込みがあるはずですので、これくらいにしておきます。
  最後に、座長の先生が「外来で診る熱傷に対しては、ラップ療法が最高ですね」とmizu先生に直接セッションが終わった後に言われたそうです。どうせならセッション中に言ってほしかったけど無理でしょうね。個人的には小範囲の熱傷だけでなく、広範囲熱傷にこそOpWt療法は最適と考えていますが、皆さんどうお考えですか。
  
  
• 2009/06/07(Sun)／投稿者： たけ＠血管外科
  mizu先生より熱傷学会及び褥瘡学会関東甲信越地方会の報告が届きました。
  
  熱傷学会（2009.6.5）報告
  • 特別セッション「熱傷治療〜わたしはこうしている」で「熱傷に対するラップ療法」を発表。
    • 展示ルームにベッドがおかれ、実際に手技を見せながら治療法を解説するという熱傷学会始まって以来の斬新なアイデアできわめて好評だった。
      
      
    • 例のごとく熱傷創にラップを巻く治療、もちろん消毒せず、水道水で洗浄するのみの治療法を披露。
      
      私の治療対象は、熱傷学会で花盛りの「広範囲熱傷」「気道熱傷」「超早期植皮」などとは異なった、世の中で最も多い、外来で診られる熱傷の治療である。
      
      
    • 産業医大形成外科講師安田先生から：「洗浄すればいいとおっしゃるが、洗浄も創から細菌を除去するという意味で消毒の範疇であると辞書に示されている」という訳の分からない質問あり。
      • →辞書に書いてあろうが無かろうが、水道水洗浄が「消毒」と考えている人はおられないでしょうと反論。
    • さらに「ラップ療法をして、創が感染して重篤になった症例が何例も来ている。ラップ療法が万能ではないという注意をもっとしてほしい」
      • →ラップ療法は創をじっくりと、きちんと診られる医師のもとで行って欲しいと強調した。
      • この安田という人は、「ラップ療法は素人でもできる、治療である。そんな治療をするのはニセ医者だ！」と吼えた先生。（安田先生ご本人により，このような発言はしていないので削除して欲しい，との申し出があり，削除）
      
      
    • 座長から
      • 「素朴な疑問です。なんで循環器の水原先生が傷や熱傷やっているのですか？」
        • → 私は外科医として長年、感染と戦ってきました。創感染は特に心臓外科では命取りです。東鷲宮病院にきて、褥瘡委員長になってからラップ療法に目をつけ実践した結果、創治療にこの素晴らしい治療法が優れていると実感し、その普及をしているわけです。熱傷に関しては、筑波大学救急部にいたころ、熱傷学会の重鎮である島崎修二先生のもとで熱傷患者を多数診ていましたので、私の潜在意識のなかに熱傷は入り込んでいるわけです。（ここは追加ですね）
  
  褥瘡学会関東地方会（2009.6.6）
  
  • 中條俊夫先生（大浦武彦先生とともに褥瘡学会を創設した褥瘡治療の重鎮）〜教育講演
    • 彼の以前の講演では、褥瘡にラップを貼って周囲をテープで固定し、中に滲出液が溜まっているスライドを出して、「ラップ療法は通気性がないので創の被覆にはダメです」と発言していたものだったが、今回そのスライドはなく、ラップ療法に関しては言及していなかった。ただ在宅において踵部に母乳パットをあてる方法を導入したり、大浦方式の穴あきフィルムを用いた治療例を示していた。これはすなわち開放性ウエットドレッシング療法である。講演後に彼と話したところ、「穴あきラップはいいよね」ときわめて肯定的な意見であった。
    
    
    
  • 大浦武彦先生〜特別講演
    • 「同じことをやっているなら猿でもできる！」「看護師はプロであれ！」「頭を使って考える看護、介護をすべき！」
    • 「創は治療の歴史をもの語っている〜創をじっくり観察すること！」「創はいままでの治療の歴史ひいては看護の質を如実に示している」「創が無言で訴えている苦痛の叫びを聞け！」
    • ポイントは、創面はその患者に行われてきた看護、介護の質を的確に表しているということ。
    • すなわち、除圧が適切に行われていない、ギャジアップや患者の移動のときなどにズレを生じさせてことによって、結果的に褥瘡の治癒遅延、ポケット形成などが生じている。
    • ゆえに、創をじっくり観察することによって看護の質を評価し、さらには看護師にフ゜ロとしての意識を惹起させる必要がある。
    • 初期型ポケットは圧迫によって砂時計様の壊死が生じたもので、これは看護者にはどうしようもない。
    • しかし遅延型ポケットは、ズレ力により生じたものである。これはズレの解除ができていないという「質の低い看護力」の表れである。
    • その他大浦武彦先生は、「私もラップ使っています」と何度も発言。
    • そして「ラップをやる人に言っておきたい。なんでもかんでもラップというのはよくない」「創の状態をよく観察し、それに応じた被覆材を使い分けるべき」と私が以前から主張してきたことと全く同じ意見を何度も言っておられた。
    • 栄養研究で関与しているモルテン社の高機能体圧分散マットレスのスライドを出して、除圧が大切ですと言ったのはご愛敬といったところか。
    • とにかく大浦武彦先生のバイタリティにはいつもながら圧倒される。
    • 私も負けないように頑張らなくてはといつも思わされる。
    
    
    
  • 一般演題
    • ○メロリンの使用（小川看護師発表）：現在、当院で開放性ウエットドレッシング療法の手段として用いているメロリンの利点に関して実際の症例をもとに報告。
      • 質問：モイスキンパッド（鳥谷部俊一先生考案の白十字の商品）とくらべてどうだったか？と聞かれて、当院では使用していないと答えてしまった。ほんとは使っている。
      • その他質疑応答は長時間におよんだ（とのこと。私は自分の発表が別の会場であったため聞けなかった）。
      
      
      
    • ○PEGスキントラブルの対処（松原師長発表）：PEG漏れスキントラブルに対して、当院独自の「陰圧パック療法」を施行して好成績をあげている。胃ろう挿入部の過剰肉芽にはステロイド軟膏を使用している。
      • 半固形食に変更しないのか？との質問
        • →している。それでも漏れて、スキントラブルになるようなときには「陰圧パック療法」を行っている。
      • どうしても漏れる場合、PEGチューブをネラトンに変えるという発言あり（安藤法）。
      • 「PEGスキントラブルがあると入院が長期間に及んでしまうのでは？」
        • →当院では地域の中核病院であり、そのような症例は完全に問題なくなるまで入院加療している。
    • ○Critical colonizationを呈する症例（水原発表）：「あきらかな感染徴候がないのにかかわらず、少々悪臭を持つ膿性の滲出液が存在し、創治癒が遅延しているような創」はcritical colonizationと判断し、抗生剤ないしはステロイド入り軟膏を使用することで、速やかな創治癒が得られる。
      • 質問（おかべ形成・整形外科クリニック院長：ラップ療法についていつも反対意見を言っている褥瘡学会評議委員）クロマイP軟膏は使用していて保険で切られることがあるがどうしているか？
        • →あまり当院では問題になっていないと返答したところ、「ゲンタシン軟膏等では耐性菌が多く生じるため使用しているとコメントすれば問題ない」と大浦武彦先生が変わって回答してくれた。
      • 大浦武彦Dr：「私は穴あきフィルムを用いている。粘着性があり、ずれないため薬効が効くと考えているからであるが、ラップ等でずれるような時には軟膏の使用をどうしているのか？」
        • →基本的に大きめの範囲で塗っている。さらには踵部に軟膏を使いたいときなどは通気性のあるポリウレタンフィルムに軟膏を塗布してから貼付することもある。
      • 創の状態を見ながら臨機応変に被覆材を使い分けている。
        • 大浦：傷をよく観察して判断しているということで、見習うべきであるとお褒めの言葉あり。
    • ○終末期の褥瘡治療におけるラップ療法（水原発表）：終末期の患者に対しては、廉価で治療効果の高いラップ療法が選択されてもよいのではという褥瘡学会に対する問題提起。
      • → 「結局、ラップ療法の宣伝ではないか？」というDrの意見あり。ガイドラインに則った（高価な）医療材料を使用した治療ではないとダメだ！という考えがあり、きわめて盛り上がった。例の岡部先生に「先生は終末期の患者にラップ療法やりますか？」と逆に質問したところ、「やります」という返答が得られた。
      
      
    • 総評
      • 今回の地方会には大浦栄養研究で立ち上げた「褥瘡研究基金」のおかげで看護婦のほか、看護助手が参加するという前代未聞の学会であった。
      • 「高齢者寝たきりの介護に看護助手は重要な役割をする」というのは私の持論であり、今後も多数の看護婦、看護助手を学会参加させてレベルアップをしていきたい。
    
    
    
  • 2009/06/08(Mon)／投稿者： くろ@名古屋
    ＞たけ先生
    学会でのご質問ありがとうございました。
    お会いしてお話できなかったのが残念です。
    
    今回はOpWTによって創感染率（正しくは創面菌による菌血症発症率）が減少傾向という結果しかお示しする事ができませんでしたが、僕は救命医ですので、OpWTによって広範囲熱傷患者の死亡率が有意に減少したという結果をお示しすることが今後の目標です。当院には創感染の有無に関わらずゲーベン、テラジアパスタ、カデックスを使ってきた膨大なコントロール群が存在しますので、近いうちに必ず結果を出せると思っております。
    希酢酸による洗浄には驚きました。医原性化学損傷を作っているだけだろうと思ったのは僕だけではないはずです。なぜ希酢酸で洗おうと思ったのかという着想について質問したかったのですが、発表直前の小生が前に出て質問する機会を逸してしまったのかが残念です。
    ラップ療法について苦言を呈した某医大講師はいわくつきの方だとは知りませんでした。あっち側からすれば、一矢報いた感があるのでしょうが、聴衆（たぶん某熱傷センターの看護師さん）からは「すごく良くなるんだねぇ」という驚きの声がもれていました。
    今回の学会で、消毒ガーゼ撤廃運動が全国に広まりつつあるのだという実感を得ました。
    今後はそのノウハウやメカニズムについてより詳細に説明し、理解を広めていくことが重要ではないかと思います。
    
    補足ですが、某熱傷センターの劇団には違和感を感じざるをえませんでした。超早期手術によって余計な侵襲を与えているのではないかという自省が一切感じられなかった違和感とともに、この時代にスワンガンツをルーチンで入れていることへの違和感を感じました。
    共同演者は「CI4以上ならば手術に耐えられる状態と判断し、超早期手術を行ないます」と自信満々におっしゃられていましたが、CIを計測する手段としてはもっと低侵襲な方法があるのではないかと麻酔科系救命医である私は思いました。そもそも、CI4以上の元気な患者さんであれば、超早期手術などしなくてもよくなるのではないかと思うのです。いや、そのような元気な患者さんは、スワンガンツなど入れず、超早期手術もしないほうが患者さんの苦痛は少なくてすむのではないかと思います。
    
    
  • 2009/06/08(Mon)／投稿者： 夏井＠管理人
    > 何が落ちているかの質問に対しては、「何か分からないけど無茶苦茶いい」と繰り返してのたまっておられました。
    小学校低学年の自由研究レベルですね。小学校高学年だったら「何が落ちているか，きちんと調べてから発表しましょう」と注意されます。
    
    > くろ先生とmizu先生以外の発表は受け狙いが多くとても全国学会における発表と呼べる代物ではなかったように思いました。
    熱傷学会のレベルは低いです。治療法の根拠もなければ，治療法の選択の論理もありません。おまけに治療結果についてきちんとデータも出しません。
    
    6月17日に出る本で私は，「湿潤治療になれた内科医や小児科医が熱傷治療をするようになると，熱傷学会自体が存在意義を失い，熱傷学会への新規加入者が減り，いずれ崩壊するのでは」と分析していますが，この熱傷学会のレベルの低さを見るとその感をさらに強くしました。
    
    > 褥●学会のガイドラインも対したことありませんが、まだラップ療法のシンポをするだけいいように思えます。
    たぶん両者の違いは，「熱傷治療を生涯の仕事にしている医者（＝熱傷専門医）は多いが，褥瘡を生涯の仕事にしている看護師は多いが医者は少ない」，ということだと思います。熱傷専門医は従来の熱傷治療に習熟することで専門医になり，それを他の医者に教えることで「先生」と呼ばれて敬われています。だから，従来治療を必死で守ろうとします。「患者を守ることを忘れ，治療を守ることに汲々とする」という構図です。
    一方，褥瘡治療ですが，在宅医療の現場でラップ療法が広まっています。在宅の先生たちは褥瘡の専門家でもないし，褥瘡だけ治療しても何の解決にもならないことを肌身で知っているからです。だから治療法にこだわらず，手軽で簡単で効果がある治療を「良い治療」と判断します。はっきり言えば，褥瘡学会があることすら知らずに褥瘡治療をしているわけです。だから，ガイドラインもそれに応じて変化せざるを得なくなります。
    
    > 超早期手術が必要って、いらないデブリをしてそこに植皮しているだけのように見えましたが
    超早期手術しかしたことがないから，超早期手術は効果的だと判断しているだけです。江戸時代の人たちが，丁髷以外の髪形を知らなかったのと同じです。だから，超早期手術は丁髷治療です。
    
    > 「ラップ療法なんて偽医者、偽看護師のすることだ」
    専門家でもない医者，看護師でもできる治療になって，一番困るのは専門医です。専門医の存在価値がなくなるからです。20世紀初頭には「虫垂炎専門医」が沢山いて，「虫垂炎学会」もありました。しかし，いつの間にかなくなりました。
    
    > 個人的には小範囲の熱傷だけでなく、広範囲熱傷にこそOpWt療法は最適と考えていますが、皆さんどうお考えですか。
    この点ですが，熱傷のほとんどは小範囲の熱傷です。そして小範囲の熱傷であれば，知識さえあれば内科医でも精神科医でも素人でも治せます。つまり，熱傷患者の99％以上は「湿潤治療を知っている熱傷専門医でない医者」が救えます。
    その結果，熱傷専門医にとって最後のよりどころは広範囲熱傷だけになるはずです。だから，「広範囲重度熱傷に湿潤治療はしていけない」と頑なに反論してくる医者には，「わかりました。あなたは広範囲重度熱傷患者を相手に治療ごっこをしてください。しかし，それ以外の99％の熱傷患者は私たちが助けますから」と言っています。
    
    
  • 2009/06/09(Tue)／投稿者： ほし＠某救命救急センター
    > 僕自身は「私はこうしている」という主要演題の中で、広範囲熱傷に対するOpWTについての紹介と実演を行いました。
    > 従来の抗菌剤軟膏ガーゼ療法と比較して、創感染率は増えず、むしろ減少傾向であったことを示したところ、
    > それなりの反響があったように思われます。熱傷学会で発表するのは初めてで、袋叩きにあうことも
    > 覚悟していましたが、杞憂でした。
    
    私は熱傷学会には加入していませんので、くろ先生のお話を聴講できなかったのが残念です。広範囲熱傷のOpWTは結局どうなのでしょう？現在当院では皮膚の処置は皮膚科が対応しているのですが、初期処置はクロマイPを塗りたくったトレックスを貼って、その上からガーゼというパターンです最近は。昨日もガス爆発による40%熱傷が入院となりましたがそうでした。私たち救急医は全身管理を主に担当しています。
    
    
  • 2009/06/09(Tue)／投稿者： たけ＠血管外科
    >広範囲熱傷のOpWTは結局どうなのでしょう？
    
    そうなんです。ここが私の知りたいところです。機会があれば是非治療してみたいと常々思っています。小範囲の熱傷でOpWT療法がいいのは、この治療をしている方々にとってはもう常識でしょう。私は広範囲熱傷にも、OpWT療法の利点が生かせると思っています。それにはOpWT療法に習熟した医師が治療にあたる必要があります。当然全身管理が重要であることは言うまでもないです。
    くろ先生、ほし先生：このあたりの今後の研究を期待しております。
    
    
  • 2009/06/09(Tue)／投稿者： くろ@名古屋
    ＞広範囲熱傷のOpWTは結局どうなのでしょう？
    
    オールラウンドではないと思います。明らかなIII度熱傷はさっさとデブリすることが大事だと思います。OpWTを行いながら，自己融解を待っていたら，MRSA感染からTSSを発症した症例があったのも事実です。III度熱傷についてはデブリ＋植皮のあとに行うのが安全だと思われます。
    一番迷うのがII度のDDBです。手術しないで粘っていると感染がこわいし，かといってやらなくてもいい手術をやるのはいやだし，周囲のスタッフはゲーベン使えと言ってくるし，困ることが多いです。この場合はゲーベンクリームをうす〜くEschar の部分にだけ塗布し，その上からサンドガーゼF（orサラフィット）で被覆しています。そうすると，Escharがきれいになくなって上皮化することが多いです。
    いずれにしても，適応をよく考えて，失敗しないようにやらないと，他のスタッフに受け入れてもらえず，従来の軟膏ガーゼ療法に戻されてしまうことを常に危惧しています。
    
    
  • 2009/06/10(Wed)／投稿者： たけ＠血管外科
    くろ先生
    コメントありがとうございます。
    
    ＞サンドガーゼF（orサラフィット）
    私は使ったことがないのですが、モイスキンパッドやメロリンガーゼと比較して吸収力はどうでしょうか？もし使い比べられていたら教えてもらえないでしょうか？
    
    
  • 2009/06/10(Wed)／投稿者： くろ@名古屋
    > 私は使ったことがないのですが、モイスキンパッドやメロリンガーゼと比較して吸収力はどうでしょうか？
    > もし使い比べられていたら教えてもらえないでしょうか？
    
    もちろん，モイスキンパッドもメロリンもすべてサンプル使用いたしました。
    
    モイスキンパッドはサンドガーゼと比較し，吸収力が弱い印象です。実際，過湿潤になって植皮片がふやけ，剥がれ落ちてしまった症例を経験しました。しかし，表面のしみ具合から浸出液の量が評価できるのは非常によいと思います。
    
    メロリンは構造としては綿に穴あきフィルムを貼ってあるだけの構造です。したがって，単独で使用すると創面が乾燥し，固着します。実際，サンプルを使用しましたが，はがすときに出血し，患者さんがかなり痛がりました。これではただのガーゼと大差ないのではないかというのが正直な感想です。OpWTというよりも，開放性ドライドレッシングに分類されると思われます。もちろん，ワセリンを併用すれば固着という問題はクリアーできそうですが・・・
    
    サンドガーゼFの特徴はそのすぐれた吸収力と低コスト性（30cm×30cmで245円）だと思います。
    
    
  • 2009/06/08(Mon)／投稿者： 夏井＠管理人
    （以下は，ホームページの更新履歴の内容です）
    昨日，関東地方にある某大学病院熱傷センターで治療を受けている患者さんが，「もっとよくならないでしょうか？」と受診されました。今年1月に事故で顔面，両手，左下肢に熱傷を受傷された患者さんで，消毒と軟膏ガーゼによる局所治療と，その後は植皮術を受けています。
    　顔面全体は硬い瘢痕で覆われ，下肢はmesh graftの網目がくっきりと残り，しかも瘢痕拘縮のため膝関節は伸展障害です。両手指も瘢痕拘縮と関節拘縮で高度機能障害と思われます。これほど無惨な治療例を見たのは10年ぶりです。どうやったら，こんなひどい治療ができるのか，怒りを覚えます。
    　これが大学病院の熱傷センターと大学病院形成外科の熱傷治療の現状です。私から見れば治療以前の惨憺たる状態としか表現する言葉がありませんが，大学病院や熱傷センターでは「救命しえた治療例」の一つとなり，「当科での優れた治療例」となります。
    
    
  • 2009/06/10(Wed)／投稿者： たけ＠血管外科
    是非これらの症例を学会に出して頂いて、熱傷専門医と議論をしてもらいたいものです。同じ場にたって議論をしないとなかなか前に進まないのではないでしょうか。このサイトをみて湿潤をやっている医師たちはもう十分分かっているでしょう。確かに従来の治療法をやっている石がすべていなくなれば変わるのかもしれませんが、それまで待っているのもどうかと思います。
    全国学会で発表している医師の中には結構若そうな人たちも多数いたように見受けます。
    是非熱い議論を聞きたいものですね。
    
    
  • 2009/06/10(Wed)／投稿者： 夏井＠管理人
    > 是非これらの症例を学会に出して頂いて、熱傷専門医と議論をしてもらいたいものです。
    
    熱傷学会が褥瘡学会ほどの度量があるかどうかでしょう。「熱傷治療に湿潤治療は是か非か」というシンポジウムでも開いてシンポジストとして呼んでもらえば，いつでも討論は受けて立ちます。
    熱傷学会側が呼ばなくても学会に参加して発表する，という手段もありますが，発表するためには学会に入らないといけないのですよ。こんな学会に金を払うのはドブに金を捨てるようなものです。この学会に金を払うくらいなら，ユニセフにでも寄付しますよ。
    
    従来の熱傷治療は科学真実ではなくパラダイムです。パラダイム相手には論争は成立しません。なぜかというと，共通概念がないからです。「熱傷創が治癒したとはどういう状態を指すか」，あるいは「創感染とはどういう状態か」という基本概念からして共通点がないのです。だから，そもそも議論にすらなりません。だから，熱傷学会側と論争しても最後は宗教論争になるだけです。
    たとえ議論になったとしても，恐らく，重箱の隅をつつくような議論（例：数年前にどっかの病院で死亡例が1例あったとか）に持ち込もうとするはずです。私が熱傷学会側の人間だったら，そういう戦術を選択します。
    
    戦う相手がパラダイムの場合，そういう正攻法では駄目です。パラダイム相手にはイメージ戦略と大衆動員がもっとも有効です。遠回りのように見えて，実は一番の近道なのがこの戦略だと考えています。
    従来の熱傷治療は「古臭い，論理的ではない，格好悪い，爺むさい，20世紀の治療」，湿潤治療は「最新で，論理的で，格好よくて，若々しい，21世紀の治療」というイメージを作れれば古いパラダイムは崩壊するはずです。このようなイメージができると，若い医者が従来のパラダイムを学ぼうとしなくなり，患者も古い治療を拒否するからです。
    
    私は色々な病院で講演しますが，決まって，「あの先生に一番聞いて欲しかったのに」という消毒大好き医者はまず絶対に参加しません。聞きたくない話からは耳を閉ざすのです。
    
    
  • 2009/06/18(Thu)／投稿者： ほし＠某救命救急センター
    くろ先生、たけ先生、コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ございませんでした。最近、バタバタと熱傷5例が連続入室しました（受傷は爆発など）。II度が25-50%くらいの方々です。初期治療はOKでした。
    1例（total56%)が4日目にseptic shock（TSS？）になりましたが立ち上がりました。他は幸い順調に経過しております。救急（うちの）担当医が「痛み止めで麻薬を欲しいのですが」と。痛みを我慢するのははやりませんから使ってくれるのはいいのですが今まで何も言わなかったのにどうして？と思ったら・・・イソゲル攻撃が2日前より始まっていました(-_-;)（それまではクロマイP＋トレックスガーゼでした）。患者さんもわかっていて「あれ（イソゲル）になってから痛いから動けん」と皮膚科担当医に訴えていましたが「ばい菌が云々・・・」という”定番”のお答えをなさっていました。
    当院では全身管理は救急科、局所処置は皮膚科が担当しているのであまり口出しできないのが・・・。処置時のみならず処置後も痛みが持続して辛い様子でした(-_-;)。一段落したら皮膚科とカンファレンスを持ってもいいかなぁという思いです。
    それと、septic shockになった症例とそうでない症例、何が違うのかなぁと思うのですが、ショックになった症例は熱傷面積が広いのと初期から抗生剤を使っていました。私たちは反対だったのですが皮膚科がどうしてもというのでCEZを投与（ホントは３世代とかを投与したかったみたいですけどそれは阻止しました・・・）。
    もう一方の症例(約30%)は今日まで全く使っていませんが順調そのものです。浸出液を吸うための一番外は”定番”のガーゼでひっつきまくるのですが、サンドガーゼFというのがいいのでしょうか？商品そのものをしりませんでした(^^;)
    
    
  • 2009/06/19(Fri)／投稿者： たけ＠血管外科
    ほし先生
    
    >ショックになった症例は熱傷面積が広いのと初期から抗生剤を使っ>ていました。
    
    初期から抗生剤を使うと、ショックが多い：これって面白いですね。どうしてでしょうか。
    
    ＞浸出液を吸うための一番外は”定番”のガーゼでひっつきまくるのですが、サンドガーゼFというのがいいのでしょうか？
    
    浸出液の吸水力からいけば、実はモイスキンパッドが一番です。データがあります。
    
    
  • 2009/06/19(Fri)／投稿者： くろ@名古屋
    ＞ほし先生
    
    5例連続入室とは大変ですね。うちは救命救急センター内に4床の熱傷ベッドがありますが、そんなことになったら断らざるを得ないでしょう。お疲れ様です。
    
    ＞septic shockになった症例とそうでない症例、何が違うのかなぁと思うのですが、ショックになった症例は熱傷面積が広いのと初期から抗生剤を使っていました。
    
    同じような重症度で、同じようにブドウ球菌がいても，TSSになる人とならない人がいますね。おそらく細菌外毒素に対する抗体をもともと保有している人と保有していない人がいるのだろうと予想していますが、いまだによくわかりません。
    
    ＞浸出液を吸うための一番外は”定番”のガーゼでひっつきまくるのですが、サンドガーゼFというのがいいのでしょうか？商品そのものをしりませんでした(^^;)
    
    サンドガーゼFもモイスキンパッドも穴あきポリ袋＋オムツも基本構造は�@穴あきフィルム　�A吸収層（吸収ポリマー）　�B防水シートの3層構造で、開放性ウェットドレッシングに分類されます。サンドガーゼFの魅力はその安さです。30cm×30cmで254円（当院納入価は153円）です。だから広範囲熱傷にも使うことができるわけです。

前脛骨筋腱完全露出の症例について　2009/04/27(Mon) ／投稿者： たけ＠血管外科

素晴らしい治癒の仕方ですね。と言いたいところですが、このぐらいでは最近驚かなくなりました（笑）。
木浪先生に是非お聞きしたいのですが、ASOがあり膝窩動脈以下に多発狭窄とのことですが、ABPIやSPPのデータはないのでしょうか。大学病院ですから当然そこまで検査していると思います。もしデータがあったら是非教えて頂きたいところです。
つまり創周辺にどれぐらいの血流があれば、肉芽増生が期待できるのかというところです。一般的にはSPP45mmHgと言われていますよね。個人的にはもう少し低くても大丈夫だと思っているのですが。この症例の足背部の皮膚の色調を診ると、比較的血流がいいと思います。つまり、ただASOがあるから、というだけでは創傷治癒が悪いとは言えず、その程度が問題だと思います。

• 2009/04/28(Tue)／投稿者： よう＠整形外科
  > 木浪先生に是非お聞きしたいのですが、ASOがあり膝窩動脈以下に多発狭窄とのことですが、ABPIやSPPのデータはないのでしょうか。
  > 大学病院ですから当然そこまで検査していると思います。もしデータがあったら是非教えて頂きたいところです。
  
  申し訳ありません。おそらくＡＢＰＩはおそらく計っていません。というのも、足背動脈や後脛骨動脈の触知は良好で、ＣＴangioではじめて狭窄が判明した程のレベルです。でもこんど患者さんが来られたら、調べてみます。
  
  > つまり創周辺にどれぐらいの血流があれば、肉芽増生が期待できるのかというところです。一般的にはSPP45mmHgと言われていますよね。
  > 個人的にはもう少し低くても大丈夫だと思っているのですが。この症例の足背部の皮膚の色調を診ると、比較的血流がいいと思います。
  > つまり、ただASOがあるから、というだけでは創傷治癒が悪いとは言えず、その程度が問題だと思います。
  
  同感です。以前ＡＳＯ・透析・ＤＭという８０歳の男性のリスフラン切断後、断端壊死し立方骨の骨髄が剥き出しになった症例は3か月で治癒しました。私はあまりＡＢＰは図っていませんが、湿潤療法2週ほどで肉芽が出てくる症例はＡＳＯでも治ると判断して行っています。それの客観的指標がＡＢＰＩ・ＳＰＰで得られるといいですね。今後、それにも注目していきます。
  
  
• 2009/04/28(Tue)／投稿者： たけ＠血管外科
  ＞足背動脈や後脛骨動脈の触知は良好で、ＣＴangioではじめて狭窄＞が判明した程のレベルです。
  
  なるほど。足背動脈が触知可能であればABPIやSPPを測定するまでもなくほぼ正常でしょう。それはASOといっても極く軽度の血流障害があるのみで、このような潰瘍が治るには十分の血流があるはずです。
  大学病院の形成外科の相談されたということですので、大学病院では当然このくらいの検査はしたんだろうと思って、お聞きしたまでです。
  
  私が言いたいことは、一概にASOがあるから、というのでは議論にならないということです。つまりその血流障害の程度が問題なのです。末梢の脈拍が触知できるのであればまず傷は治ります。そのあたりを最初に見極めてから、いろんな治療をしないといけないことをまたさらに痛感しました。
  
  貴重な症例提示ありがとうございました。

ポリウレタンフィルムの新しい用法　2009/04/24(Fri) ／投稿者： カネコ＠北海道

　胸腔ドレーンを入れた時、当院では２−０ナイロン糸（以前は １−０絹糸でしたが、ついにナイロンにしましたｗ）で皮膚固定するほかにさらに布絆でさらにテープ固定を追加しています。で、このテープにかぶれる人が多く、何か良い方法はないものかと考えていて思いついたのがポリウレタンフィルムで下貼りをし、その上からテープ固定です。
　これが意外と功を奏し、この方法にしてからのテープかぶれは激減しました。

　そこでさらに思いついた方法。田舎の何でも外科の当科では整形外科疾患も結構みます。大腿・下腿筋挫傷や背筋挫傷（要するに肉離れ）のテーピング固定なんかも結構行うのですが、テープかぶれがいつも悩みでした。これも固定部の下貼りにポリウレタンフィルムを使ってみるとやはりテープかぶれが激減しました。

　当然ポリウレタンフィルムの固定性は布絆やテーピングテープに比べれば劣ると思いますが、実用性では問題ないようです（テーピングでも十分痛みが取れるレベル）。もちろん、激しい運動をして汗をかいた時やお風呂に入るなどした時には効果が低下すると思いますが、一つの対策としてアップしておきます。

• 2009/04/24(Fri)／投稿者： 夏井＠管理人
  似たような工夫として，小児のSSSS（ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群）の患者さんで点滴を固定しようにもビランだらけで絆創膏が張れない，何とかならないか，と相談を受け，点滴刺入部の周辺に広くデュオアクティブを張り，点滴固定用絆創膏をデュオアクティブの上に張って固定したことがありますが，とても効果的でした。おまけに，点滴が抜ける頃にはデュオアクティブ貼付部はしっかり治っていました。
  
  一般に，絆創膏の接着剤にはアクリル系とゴム系の2種類があり，皮膚に優しいのは前者とされていますが，結局は絆創膏の接着力と絆創膏にかかる張力の力比べになり，「絆創膏は剥がれず，皮膚損傷（角質損傷）もない」ということはないようです。
  その意味で，ポリウレタンフィルムを広く張ると，張力が広い面積に分散されるため，絆創膏単独のように一箇所に力が加わることがなくなり，フィルム貼付部の角質損傷がなくなるのでしょう。
  
  ちなみに以前，あるメーカーから「絆創膏まけを起こさないゲル状接着剤による絆創膏の試作品なんですが，使ってみてください」と提供されたことがあります。心電図の電極の接着部分と同じような物らしく，絆創膏まけはほとんど起こさない優れものでした。しかし，絆創膏としては破格のお値段になってしまい，結局，これは実用化はされなかったようです。今から10年位前のことです。

WOCの研修について　2009/04/20(Mon)／投稿者： mizu＠埼玉

当院で初のWOC研修を終了したナースが誕生します。最終試験は5月とのことですが・・・。
WOC研修の内容は、基礎的な消化器外科的なことから、患者心理まで網羅した、それはそれは内容の濃い研修内容だったとのことでした。
でも、彼女から研修内容を聞いたのですが、そこにはラップ療法の「ラ」の字もなかったとのことでした。
すでに全国で行われているラップ療法について、創傷治療エキスパートであるWOCがラップ療法に関して講習を受けていないということはやはり奇異に思えました。
そのためにWOCとラッパーとの乖離が生じて現場に混乱が生じているのです。
そこで、私は今年度の褥瘡学会のラップ療法シンポにおいて、以下の点を希望事項として述べることにします。

1. 褥瘡ガイドラインに、「食品用ラップや穴あきポリ袋を用いるいわゆるラップ療法は、この方法を熟知した医師の責任のもと適応と安全性を十分に考慮したうえでこれを施行してもよい」、という文が記載されること。
2. WOCの教育カリキュラムに「ラップ療法への対応」という講義を加えること。

• 2009/04/21(Tue)／投稿者： 夏井＠管理人
  WOC問題についてはいつも辛口になります。
  
  私のところにはさまざまな病院の医師・看護師さんから「院内にWOCナースがいるためOpWTを行えない。周囲の病院ではしているのに・・・」とか，「WOCナースはストマケアだけして褥瘡治療には口出ししてほしくない」というメールがよく来ます。
  
  WOC ナースの制度はアメリカだったら問題ありません。しかし，今後日本の医療現場でWOCナースが悩みのタネになると思います。アメリカと日本の違いは何か，それは鳥谷部という革命家がいるかいないかです。アメリカには鳥谷部という革命家がいなかったからOpWTという革命は起きず，WOCナース（ETナース）の知識は重んじられます。そういうアメリカの制度を基に作られたのがWOCです。だから「鳥谷部がいてOpWTが広まりつつある日本」の現状に合わなくなっていきます。
  
  WOCナース制度が作られた当時はまだOpWTは普及していなかったので，WOCの専門知識は最先端でした。しかし，社会状況が変わってしまい，WOCの知識は現状に合わなくなっています。「OpWTが普及しつつある日本」ではWOCの知識は蓄音機，木炭自動車，火縄銃と同じです。
  
  > 　以上の内容を学会側に働きかけることで、WOCと我々ラッパーとの接点が築かれるような気がしますが、いかがでしょう？
  私は多くのWOCとこれまで議論を重ねてきましたが，WOCには「自分たちの知識だけが正しい。自分たちが習ってきたことだけが正しい」という考え方をする人がほとんどです。自分たちが受けた教育にそれだけの自信を誇りを持っているからです。
  だから，ラップという言葉を口にするなんて汚らわしい，という反応を見せます。私の知っているWOCの9割はこのタイプでした。
  
  WOC の教育内容にOpWTを取り入れるのは簡単なようですが，実はこれはWOC教育システムに重大な矛盾を生じます。OpWTを教えてしまうと，各種軟膏や被覆材を使った褥瘡治療は実はどれも不要である，ということに踏み込んでしまうからです。これはつまり，それ以前のWOC教育の否定になり，これまで生み出した多数のWOCナースの再教育が必要という議論にもつながります。
  
  OpWTは褥瘡治療にあまり興味がない医者や看護師ほど受け入れやすいのです。一番受け入れるのが困難なのは褥瘡治療の専門家，褥瘡治療にこだわりを持つ専門家です。OpWTは従来の褥瘡治療の常識を否定するものだからこそ，従来の専門家ほど激しく反発するのです。WOCは「従来の褥瘡治療」の専門家中の専門家です。ここに問題の本質があります。
  
  
• 2009/04/21(Tue)／投稿者： 夏井＠管理人
  これは「専門家とは何か」という命題と同じです。
  
  専門家とは，ある特定分野についての深い知識を持ち，その知識について周囲に人間が価値を認めている存在です。知識があるだけでは駄目なんですね。だから，脳神経外科の手術の専門家やラーメン評論の専門家はいても，天動説の知識がいくらあっても天動説の専門家とは呼びません。天動説の知識は必要とされないからです。
  要するに，知識を持っていることが重要なのでなく，他人が価値を認める知識・能力であることが必要なのです。
  
  これまでは「褥瘡治療は専門的知識を持った専門家が治療しないと治らないもの」でした。そのため，専門家が集まって褥瘡学会を作り，治療に習熟する必要がありました。そして専門知識を持ったWOCナースも生まれ，WOCは習い覚えた専門知識を駆使して褥瘡を治療し，周囲の人もそれを必要としていたわけです。褥瘡治療には病期分類ごとに各種の軟膏や被覆材を使い分ける広い知識が必要であり，そういう知識は専門家にしかないからです。
  
  しかし，OpWTが誕生し，褥瘡は専門家でなくても治療でき，ゴミ袋と紙おむつさえあれば素人が処置しても治るものに変化しました。この時点で，各種軟膏の使い分けなどの褥瘡専門家の知識は不要なものになり，周囲の人もその知識を必要としなくなります。つまり，WOCナースは「知識はあるが，その知識には価値がない」状態になります。
  問題は，WOCナース自身が「自分たちの知識は価値がなくなった」ことを受け入れられるか，それに耐えられるかです。
  
  かつて，レントゲンもCTもない時代には肺炎の診断は触診や打診など五感を駆使して下すしかなく，名人芸を要しました。その頃は，肺炎の診断は専門家にしかできなかったのです。しかし，レントゲンとCTの普及で肺炎は医学部学生にもできるものになり，かつての名人芸的診断は不要になり，肺炎診断の専門医もいなくなりました。かつてはロボトミー手術の専門家がいましたが，向精神薬の普及とともにその専門知識は時代遅れになりました。
  それと同じです。
  
  
• 2009/04/22(Wed)／投稿者： mizu＠埼玉
  30年以上のETそしてWOCの歴史はなかなか長いものがあります。
  この期間に培われたものは一気には崩すことはできないでしょう。
  でも、ラップ療法がこれだけ巷で普及している現在、内部から変えていこうという気概のある人に期待しています。
  私は、ラップ＆WOCハイブリッドナースと呼んでいますが(笑)。
  うちから誕生予定のハイブリッドナースはそのような一人になってほしいものです。

割り箸事件考　2009/04/16(Thu)／投稿者：○○

ゴッドハンド輝　TV版　2009/04/11(Sat)／投稿者： Y2

塩化ベンザルコニウムについて　2009/04/02(Thu)／投稿者： サカ@vet

当院では尿道カテーテルを入れる際、カテーテルや尿道周囲を塩化ベンザルコニウム液に浸したガーゼで濡らしてから手技を行っています。塩化ベンザルコニウムのボトルの保存状態も良いとは言えません。

夏井先生の記事を読んで、塩化ベンザルコニウムの使用をやめるようにしたいと思っています。塩化ベンザルコニウムによる感染報告の資料などあったら、より強く中止を求められると思って探してみましたが、見つけられませんでした。 そういう報告をご存知の方、ご教授ください

「ケア」主張退け元看護課長に有罪　2009/04/01／投稿者： 水野＠尼崎