タンパク質は、血糖値を上げ、インスリンも分泌させる
江部先生の「糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド」の「はじめ」に次の記述があります:
アメリカ糖尿病学会(ADA)によれば、食べ物が摂取され消化・吸収された後、糖質は100%が血糖に変わりますが、たんぱく質と脂質は血糖に変わりません。
しかし、最近到着した医薬ビジランスセンターの浜六郎理事長の本の中に、非常に興味深い記載がありますのでご紹介します。
ブドウ糖59gによる血糖値の上昇とインスリン分泌をAUCで評価してそれぞれ100%とすると、タンパク質59gは、血糖値を13%上げ、インスリンも34%分泌させるという内容です。
また、たがしゅう先生のデータでも、タンパク質による血糖値の上昇とインスリン分泌が報告されています。
「薬のやめ方」事典 浜 六郎 (著)、出版社: 三五館 (2017/3/19)
p.49
糖質は大量のインスリンを必要とする
血糖値をもっとも高くする食物は、ブドウ糖そのものです。糖質成分が多い食品ほど、ブドウ糖そのものを飲んだときの上がり方に近くなります。以下に、オーストラリアのブランド・ ミラーらのグループの研究のデータを紹介します。(文献8)
(文献8)
Bao J. Brand-Miller JC et al. Am J Clin Nutr. 2011, 93 (5), 984-996 (論文全文が無料公開)
【注2】59gという半端な数字の根拠について。最近はエネルギーを表すのに、キロジュール(KJ)を使う ことがしばしばある。1000KJは、239キロカロリーに相当する。糖尿病食では80キロカロリーを1単 位で表すが、それを当てはめると、1000KJ(239キロカロリー)は約3単位(80キロカロリー×3)に相当し、ブドウ糖59g分のエネルギーとなる。ブドウ糖59gを健康な成人が食べた後、2時間までの血糖値と、 インスリン値の上昇曲線を描いて、その下の面積(AUC=Area of Under the Curve)を計算し、さまざまな 食品もそれぞれAUCを計算して、ブドウ糖59gを基準とした場合、どのくらいあるか(%)を計算する。 (注2終わり)
たとえば、糖質59g【注2】 当たりの血糖値 の上昇は、ブドウ糖59g摂取時の平均76%です。
ほとんどが脂質でできているバターやアボカドは、ブドウ糖と同じエネルギー量だけ食べて も、血糖値は、ブドウ糖のわずか1~2%しか上がりません。
一方、タンパク質が豊富な食べ物は、糖質が含まれていなくても、タンパク質59g当たりの血糖値は、ブドウ糖59g摂取時の13%上昇します。
インスリンの必要量はどうか。糖質摂取時は、血糖値の上昇とともにインスリンが大量に必 要になります。ブドウ糖59gを摂取したときに健康な人の体内から出る(必要な)インスリン の量を100%とすると、糖質59g当たり70%、タンパク質は59g当たり34%です。
一方、脂質では、バターで2%、アボカドで4%にすぎません。血糖値は上昇しないし、インスリンもごくわずかしか必要としないのです。
タンパク質の場合、血糖値の上昇の程度は13%であったのに、インスリンはやや多めを必要としていました。これは、なぜでしょうか?
それは、タンパク質が消化されてアミノ酸になり吸収されると、アミノ酸を筋肉に取り込んで古い筋肉を分解し、新しい筋肉を作るのですが、筋肉に合成する段階でインスリンを必要とするからです。
脂肪も、新しい脂肪を作るためにはインスリンが必要ですが、その反応は非常にゆっくりとしているために、すぐにはインスリンを必要としません。
多分,タンパク質摂取とインスリン分泌だけを見ていても何もわからないと思います。