「輸入牛肉の発がん性」についてのメールです。
 夏井先生、今日のブログ読んでいたら何を食べたらいいの?・・・
 横浜の幹事の〇〇さんと話すと、野菜も農薬の問題があるようだし・・・そんな現代を楽しんで精一杯に生きろ!ということ・・・ですか?
 「では,何を食べたらいいの」について,皆様はどのように考えますか?
 「輸入牛肉の発がん性」というメール。
 オーストラリア、カナダ、アメリカ、メキシコなどの輸入牛肉(EUを除く)には、肥育用に女性ホルモンが使用され、それが肉に残留して発癌性を持つことが次のサイトの情報に書かれています。
  1. AERA 2014年5月26日号 発がん性と関係あり?「ホルモン剤肉」に潜むリスク
  2. 2014.09.22常総生活協同組合 食のグローバル化~自由貿易協定(「TPP」「EPA」協定) の中で牛肉・豚肉の安全性を考える
  3. 総合病院 南東北病院
    ◎ホルモン残留牛肉は要注意 基本は疑しきは食せず◎
  4. 週刊文春2012年11月22日号 危険な”残留ホルモン”が国産牛の600倍 輸入牛肉で発がんリスクが5倍になる 奥野修司(ノンフィクション作家)
  5. 週刊文春2012年11月29日号 ハンバーガーにご用心! 輸入牛肉で日本の子供が壊れてゆく ノンフィクション作家・奥野修司
 
癌に関連するポイント
  1. EUの癌と牛肉---女性ホルモンはEUの乳がんを35~45%増加
    WHOのデータによると、1989年のホルモン剤を使用した牛肉の輸入禁止後、EU諸国の乳がん死亡率が大きく低下。
    乳がんの死亡率は、89~06年に、アイスランドで44.5%、イングランドとウェールズで34.9%、ルクセンブルクで34.1%減少。
  2. 牛肉に女性ホルモンを使用すると癌を増加させる、半田康医師(北海道大学公衆衛生)
    ①06年にハーバード・メディカルスクールの研究者は、9万人の女性を対象に調査した結呆、牛肉に代表される赤肉をたくさん食べると乳がんのリスクを大きく増加させると発表した。発がんリスクを増加させる原因は、牛に与えられるホルモン剤の残留ではないかと指摘されている。
    ②マウスに工ストロゲンを投与したら乳がんが発生したと報告されたのは1948年です。エストロゲンはホルモン依存性がんの危険因子だという事実は、今や教科書レベルの話です
    ③日本では、60年代と比べて牛肉消費量が5倍に達している(そのうち約25%は米国産牛肉)。そして実は、ホルモン依存性がんも5倍(乳がん4倍、卵巣がん4倍、子宮体がん7倍、前立腺がん10倍)に増加しているのだ。両者の増加トレンドは、見事に一致する。
 
 この他に、女性、胎児、発育途上の子供への悪影響、ハンバーガーの残留値の高さなども述べられていますので、一度読まれることをお勧めします。
 糖質制限を行う際には、輸入牛肉(EUは除く)は避けた方が賢明であると思われます。
 ちなみに,日本の牛肉にはこんな問題もあるようです。
     
【ビタミン欠乏で作る!「霜降り肉」の衝撃事実 20年前に「A5牛肉」は存在しなかった】
 もちろん,ホルモンや発がん物質を与えられているわけではなく,単にビタミン不足で育てられているだけなので問題はないのかもしれませんが・・・。

 では,鶏はどうかというと,これまた凄まじい事になっています
 例えば,標準的な採卵鶏は年間に60gの卵を300個産み落とします。つまり,1年間で18kgですね。一方,採卵鶏の平均体重は2kgですから,体重の9倍もの卵を生み続けるわけで,これは生物学的にはモンスターとしか言いようがありません(単純計算では,体重60kgの女性が1年間に子どもを540kg,つまり180人の赤ん坊を産んでいるのに相当?!)
 また,鳥類は一般に長寿の生物(インコの平均寿命は80歳,アホウドリは150歳)で,鶏の原種とされるセキショクヤケイの寿命は15年です。しかし,飼育されている採卵鶏は急速に大きくして生後60日で卵を生むようにコントロールされ,産卵能力が衰え始める700日前後で殺されます。つまり,平均寿命は2年! 人間で言えば10歳で殺されるのと同じです。つまり,「5歳前から毎年180回出産し,10歳になると殺される」のが採卵鶏の生涯です。まさに,鬼畜系児童ポルノの世界です。
 更に,野生のセキショクヤケイは春に孵化して翌年の夏に羽毛を一斉に落として夏毛に変え(換羽という),その後,産卵能力を持ちますが,換羽にはかなりのエネルギーが消費されます。そこで養鶏場では,換羽が起きないように絶食・絶水させたり,光をコントロールするなどして換羽前に産卵を始めるように工夫しています。
 その結果,卵は物価の優等生と呼ばれ,「Lサイズの卵10個 168円」という値段でスーパーの棚に並んでいて,それなのに「168円! 高いわねぇ」と文句を言われているのです。

 要するに,恒温動物(哺乳類,鳥類)であるウシ,ブタ,ヒツジ,ニワトリなどを飼育してその肉や卵を食べるのは,そもそも無理があったのです。恒温動物は外気温より高い温度を体内で作りますが(産生部位は内臓と筋肉),基礎代謝の6~7割は体温生成に使われていると考えられています。つまり,基礎代謝の6~7割は,最終的には外部環境に熱放射の形で放出され,それを補うためにはさらに食料を食べ,水を飲まなければなりません。だから,畜産には莫大な食糧と大量の水が必要になるわけです。

 同様に,マグロやカツオなどの高速で泳ぐサバ科の魚類は水温より10℃以上高い体温を維持しています(運動に必要な筋肉の酵素の至適温度は水温より高いから)。そのため,サバ科の魚は背部の筋肉に「血合い」という動静脈シャントを持ち,冷水域に入ると体表面に血液が行かないように動静脈シャントをコントロールすることで動脈血温低下を防ぎ,深部温度を一定に保ちます(ちなみに,トムソンガゼルやインパラは頸動脈と頸静脈の間に動静脈シャントがあり,運動時に脳の温度が上がらないようにコントロールしています)
 近大養殖マグロが養殖なのに高価なのは,マグロが基本的に「恒温動物」だからではないかと思われます。マグロやカツオは哺乳類ほどではないにしろ,基礎代謝のかなりの部分を熱産生に使っているはずですから,どうしても効率が悪くなると想像されます。

 要するに,世界人口90億人時代のタンパク源としては,恒温動物(哺乳類,鳥類,サバ科の魚類)は除外すべきという結論になります(ちなみに,獣脚類の爬虫類ーいわゆる恐竜ーが現在も生き残っていたとしても,彼らは恒温動物なので食肉のための飼育には向かない)
 タンパク源として選択すべきは変温動物(爬虫類,両生類,サバ科以外の魚類,節足動物,昆虫,環形動物など)でしょう。しかも,人間の食糧と競合しないものを食べて育つものでなければいけません。つまり,肉食動物(爬虫類,両生類)の食餌は人間と競合します。
 このように理詰めで考えると,最後に残るのは「昆虫」だけなんですね。

 経済が成長すると食肉消費が増える,というのが人類史の経験則です。これが正しければ,中国の12億の民,次いでインドの10億の民が食肉生活に入ります(インドはベジタリアンが多いけど・・・)。しかし,現時点で確実に言えるのは,地球上の畜産業と漁業を総動員しても,中国+インドの22億人を満足させる「肉」は供給不能である,ということです。