桐山先生の記事,大変にわかりやすく,FACEBOOKの糖質制限のグループで紹介させていただいたところ,みなさんも,とても喜んでくださっています。
 特に,締めくくりのウィットの効いた文章のおかげで,ここ数日のマスコミの報道にモヤモヤしていた気持ちが吹き飛びました。
 このような時は,笑いで切り返すことの大事さを学ばせていただきました。
 本当にありがとうございます。
この記事のアドレス・・・http://www.wound-treatment.jp/new_2016-02.htm#0219-3

 心臓外科医です。
 桐山秀樹さんの事についてです。糖質制限をしたから,突然死したとか,糖質制限は危ないと言っている,あるいは書いているサイトがあります。はっきり言って,○○です

 理由は3つあります。
 先ず,n=1である事です。おそらく,糖質制限をしていない糖尿病患者さんは,その数万倍,失明,腎不全,心筋梗塞etc.を生じていると思います。
 2番目の理由です。心筋梗塞のリスクファクターは糖尿病だけではありません。1.高血圧 2.高脂血症 3.糖尿病4.喫煙 5.肥満6.家族歴 7.ストレスなどです。要するに多因子が原因となる疾患です。そこの議論がありません。
 3番目の理由です。それは桐山さんの死因が本当に心筋梗塞だったのかという疑問が残ります。突然死=心筋梗塞ではありません。もしかしたら,心筋症が有ったのかも知れません。QT延長症候群の様な心臓病が有ったのかも知れません。

 そういう医学的にきちんとした議論をせずに「糖質制限=悪者」と決めつける論者を見て(読んで),笑っていました。しかし,そういう論「糖質制限=悪者」を信じる人も多いのだろうと思います。
この記事のアドレス・・・http://www.wound-treatment.jp/new_2016-02.htm#0219-4

 桐山様急逝につきましてのブログ記事,拝読させて頂きました。
 私も患者さんにダイエット指導をする際は,自分の経験を踏まえて糖質制限を紹介指導しております。
 アップされた記事の事も踏まえて,また続けて行きたいと思います。
この記事のアドレス・・・http://www.wound-treatment.jp/new_2016-02.htm#0219-6

 フリーライターの桐山さんが心筋梗塞で亡くなられたと聞き,一人の患者さんの病態がまさにこれであることにようやく気が付きました。
 糖質制限で糖尿病は完治した(血糖値もHbA1cも正常化)のに,下肢の糖尿病壊疽の進行が止まらず,結局,下肢切断になった患者さんです。

 この患者さんはかなり以前から糖尿病を指摘されていたのに放置し,炭水化物大好き生活を続けたそうです。
 そして,右第1趾がいきなり黒変し,病院を受診したところ,高度の未治療糖尿病で直ちに入院となり,第1趾切断となりました。退院後,傷がいつまでも治らないため,ネットで調べて当科にたどり着かれたそうです。また,手術後に友人から糖質制限について教えてもらい,糖質制限を開始して血糖値は正常化したそうです。
 当科では直ちに湿潤治療を開始し,創部は一時非常に良い状態になりましたが,その後,突然足趾が壊死して入院。高度貧血と腎機能障害があり治療開始。貧血の改善で創の状態も落ち着き退院。数カ月後に再度悪化し,再入院。まるでジェットコースターのような経過をたどり,下腿や足背に次々に膿瘍形成するようになり,下肢切断になりました。ちなみにこの間,血糖値もHbA1cも一貫して正常範囲でした。

 恐らく,未治療時代に下腿の細動脈閉塞が行き着くところまで進行してしまい,血糖値が正常になっても動脈は正常状態に戻れなくなったのではないかと思います。
 つまり,肝硬変や肺線維症,消毒と乾燥で硬い瘢痕組織で治癒した熱傷と同じで,不可逆性変化の終末像であり,局所治療をいくら頑張っても改善することはなく,肝移植のように組織・器官を取り替える以外には治す方法はなくなります。

 冠動脈がこのような「動脈硬化・動脈閉塞が行き着くところまで」行ってしまうと,糖質制限で血糖コントロールをしても,心筋梗塞はいずれ必ず起こります。糖質制限を開始した時点でプレ心筋梗塞の状態であり,糖質制限で血糖値が正常化しても,冠動脈の状態は改善できないからです。
 江部先生はこれを,「高血糖の記憶」「消えない借金」と呼んでおられます。

 私は「熱傷は初期治療が最もモノを言う。いわば先手必勝!」と患者さんに説明しています。揚げ物の油のように高温の液体による熱傷でも,最初から湿潤治療をするとそれほど痕を残さずに上皮化しますが,最初の数日間にゲーベンクリームなどによる昔ながらの治療を受けると,その後に湿潤治療を始めても肥厚性瘢痕を生じる確率が高くなります。もちろん,「昔ながらの軟膏治療」の時期が長くなればなるほど,肥厚性瘢痕で瘢痕治癒する確率は大きくなります。
 恐らく,糖質制限による糖尿病治療も同じで,糖尿病・高血糖と診断されたら直ちに糖質制限(あるいは内服薬やインスリンによる血糖コントロール)を始めるべきなのでしょう。開始時期が遅れれば遅れるほど「高血糖の記憶」が動脈に残るようになり,ある時期を過ぎると不可逆性の変化となって改善は見込めなくなり,動脈閉塞による症状はかならず出るようになります。

 それと,いつも思うことですが,江部先生も私も迂闊に病死できなくなりました。江部先生や私が肺炎で死んでも腎不全で死んでも,腸閉塞で死んでも西ナイル熱で死んでも,「死んだのは糖質制限をしたせいだ。糖質制限をすると死ぬ」と喚き立てるバカがいるからです。夕焼けが赤いのもポストが赤いのも糖質制限のせい,というオバカさんお得意の論理ですね。
 というわけで,江部先生にしても私にしても,死ぬとした事故死しか選択肢がなくなります。さすがに事故死と糖質制限は結び付けられないでしょう。問題は,事故死って滅多にないレアな死に方だってこと。
この記事のアドレス・・・http://www.wound-treatment.jp/new_2016-02.htm#0217-2