『モイスキンパッド® vs ズイコウパッド®』
江東区では都立墨東病院に救急搬送される患者さんが多いのですが,墨東病院ERでは熱傷治療は「プロペトとモイスキンパッド」でほぼ統一されているようです。素晴らしいなと思います。
その墨東病院から当院に紹介される熱傷患者が多いのですが,期せずしてモイスキンパッドとズイコウパッドの比較実験をすることになります。
先日受診された広範囲2度熱傷の小学生がいて,両側下肢創部の痛みのために立ち上がることも困難とのことで車椅子で受診されましたが,ズイコウパッドにしたところ「こっちのほうが痛くない」と言い,いきなり立ったのです(テレビだと絶対に「ヤラセ」って言われるシーンだな)。「野球の練習をしてもいい?」と喜んでいました。翌日には,スタスタ歩いて外来を受診。
モイスキンパッドの表面材は「多孔性のポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン」とのことですが,ズイコウパッドの表面材と比べるとやや固く,固着の程度も高いのが原因と思われます。
先日,モイスキンパッド® vs ズイコウパッド®についてちょっと書きましたが,その続報です。
いろいろ調べてみると,モイスキンパッド®の表面材は「ポリエステル」のようです。つまり,メロリンガーゼ®と同じです。メロリンの表面材はラップに比べると硬くて柔軟性に欠けていますが,モイスキンパッド®の表面材も触ってみるとメロリン®に極めてよく似た肌触りです。この「硬さ」が痛みの原因になったのでしょう。
また,モイスキンパッド®の吸収体は吸水性ポリマーです。つまり,「水を吸い込んだら離さない」物質であり,傷表面の水分を吸収するだけ吸収するため,創面を乾燥させます。つまり,物理的に考えると,モイスキンパッド®は湿潤環境を維持する治療材料でなく,創面を乾燥させる旧世代の治療材料と同じ,いうことになります。
一方,ズイコウパッド®の吸収体はモイスキンパッド®と同様,吸水性ポリマーで共通していますが,ズイコウパッドの表面材は3次元立体構造のメッシュであるため,ここに水が一時的にトラップされ,そこから溢れた分が吸水性ポリマーに吸収されるようです。つまり,表面材のメッシュは常に水を含んでいて,創面の乾燥を防いでいるようです。これが,モイスキンパッド®の表面材であるポリエステルのフィルム(=水分保持能力なし)との違いと思われます。だから,吸収層が同じポリマーであっても,ズイコウパッド®は創面の乾燥を防げるのに対し,モイスキンパッド®は創面を乾燥させてしまうのでしょう。
また,プラスモイスト®の場合は,表面材は「機能性透過膜」という3次元構造体で,ここに一時的に水が保持され,溢れた部分が吸収体(ポリマーではない)に移行する,という構造をしているため,創面が乾燥してしまうことはないようです。