健康長寿復活への鍵その1
広報やえせ 10月号 健康回覧板より

【沖縄県民の低栄養化が深刻です】
 「沖縄クライシス(危機)」。2000年に男性の都道府県別平均寿命が26位に転落しました。最新の統計では男性が30位、女性が3位です。「食の欧米化」や「脂肪の摂りすぎ」のせいだとされますが、皆さんはどうお考えでしょうか?
 悪者扱いの脂肪(ラード)ですが、復帰前後の沖縄県民は全国平均よりはるかに多く食べていました。1日に県民は63g、全国平均は52gです。もちろんその頃は男女とも平均寿命が日本一でした。糖尿病患者数も全国で最少でした。ところが脂肪の摂取量が減り続けるとともに(ラードも敬遠される)、平均寿命のランキングが低下しています。2011年のデータでは、脂肪摂取量は全国平均(54g)を下回る51.8gです。
 カロリーも驚くほど減っています。復帰前後の1960kcalから減り続け現在では全国平均(1840kcal)を大きく下回る1668kcalです。先進国の平均(3331kcal)で比べると半分ほどです。いまや県民の栄養(エネルギー)不足が問題なのです。

【粗食では長生きできません】
 昨今の困った風潮に「米や玄米、雑穀、野菜中心の粗食が身体に良い」とか「豚肉や脂肪(ワーアンダ)は身体に悪い」というものがあります。これらは現代の栄養学を無視した、むしろ健康に悪影響を及ぼす考え方です。「雨ニモマケズ」の「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲ食べ」で有名な宮沢賢治さんは菜食主義でも知られますが、寿命が37歳でした。そのような粗食だった明治時代の日本人の平均寿命は40歳ほど。日本人は古来から仏教や政治の影響で「肉食は良くない」とされたため、栄養状態が悪く、先進国の中では最も寿命が短かったのです。戦後しばらくしてから平均寿命が欧米諸国や沖縄県に追いつきます。「食の欧米化」で肉食が増えたからです。
 沖縄県は本土とは異なります。琉球王朝時代にはすでに養豚が盛んで、ヤギも食べていました。以来、豚肉食の文化が600年以上も続いています。欧米と同じような家畜文化(肉食)で、戦後も欧米食・琉球豚肉食文化(ポーク缶、ステーキ、ラフテー)が本土復帰まで続きます。もちろん、本土とは違って世界的にも長寿で有名でした。しかし、本土復帰後から急速に「食の本土化(粗食)」が広まります。平均寿命のランキングが下がり続けている原因は、「食の欧米化」ではなく「和食化」なのです。

【年を取っても豚肉を食べましょう】
 日本は高齢社会。病気で寝たきりになる人も少なくありませんが、最新の統計では沖縄県は脳梗塞で亡くなる人(年齢調整死亡率)は全国で最も少ない47位です。ちなみに、長寿の長野県は脳梗塞が多いのが特徴です(女性2位、男性14位)。沖縄の高齢者は元気なのです。それはなぜでしょうか。本土復帰前からの伝統的な琉球豚肉料理に慣れ親しんでいるからです。高齢になっても琉球豚肉食の伝統を受け継いでいる世代こそが、沖縄県の長寿を支えていたのです。(続く)

参考文献 渡辺信幸『一生太らない体をつくる「噛むだけ」ダイエット』東京書店


健康長寿復活への鍵 その2 広報やえせ12月号健康回覧板

【食べたものが、体をつくる】
 私たちが心身ともに健康で長生きするために欠かせない栄養素は4種類あり、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルです。これらは体内で合成できないため、毎日の食事から摂取する必要があります。つまり「必須栄養素」ですから不足すると重大な病気になる可能性があります。食べたものが、体をつくり、修復するからです。私たちの体は、タンパク質と脂質でできています。だからこそ、これらをたっぷり食べる事が大切なのです。代表的な食品は「肉・卵・チーズ」です。これに対して「必須栄養素」ではない栄養素があります。「炭水化物(糖質と食物繊維)」です。「穀物・果物・野菜」に含まれます。栄養学的には、糖質は体内で合成できるため食べる量を減らしても問題はありません。むしろ「糖質」の食べ過ぎは肥満、糖尿病の原因になります。タンパク質、脂質は不足が問題なのに対し、炭水化物は食べ過ぎが問題です。したがって、すぐにできる健康法は、肉・卵・チーズ中心の食事で炭水化物(特に糖質が多い穀物)を控えることです。低糖質の野菜としては県産品の葉野菜をお勧めします。

【脂肪を補給しましょう】
 脂質の代表ともいえるコレステロール。よく悪者扱いされますが、本当は生命の維持に必要な物質です。男性ホルモン、女性ホルモン、ビタミンDなどの人体に必要な物質はすべてコレステロールから合成されます。また、傷ついた組織や血管を修復する大切な働きもあります。むしろ血液中のコレステロールの値が低いと脳卒中のリスクが高くなるとの報告もあります。このように大切なコレステロールは8割は肝臓で合成され、残りの2割を食事からの摂取で補います。健康な人(家族性脂質異常症を除く)は、摂取量に応じて合成量が調整されています。したがって、肉や卵を食べるとコレステロール値が上昇するとの説は正しくありません。その証拠に、コレステロール値を下げる薬を飲んでいる人に「栄養指導を守って卵や脂肪を減らしたら、数値が下がって薬がいらなくなった」という人がほとんどいないのです。卵や肉を敬遠しているのに薬を飲み続ける人がいるのが現状です。

【豚肉料理を見直しましょう】
 豚肉に含まれる脂質は必須栄養素ですから、不足すれば病気になります。食べ過ぎを心配する人がいますが、必要以上は体に吸収されません。食べ過ぎたら下痢をして体外に排泄されます。日本脂質栄養学会がさまざまな油をラット(ねずみ)に与えた研究結果では、寿命を延ばした安全な油はラードとバターで、逆に寿命を短くした油脂として植物油(カノーラ油、オリーブ油、菜種油など)が挙げられています。私は家庭での調理はすべてラードを使用しています。またラードには殺菌作用や傷の修復作用があるので、ちょっとした傷に塗ったり、お肌の手入れにも使っています。難治性の床ずれに塗り完治した人もいます。
 豚肉を余すところなく食べ(鳴き声以外は全て食べる)、料理にラード(ワーアンダ)を使う伝統的な沖縄豚肉料理を見直すことが「健康長寿復活への鍵」なのです。(続く)

健康長寿復活への鍵 その3 広報やえせ2月号健康回覧板より


【慢性閉塞性肺疾患とは】
 沖縄県は肥満・糖尿病が話題になっていますが、もっと深刻な問題があります。厚生労働省発表の平成22年度死因別年齢調整死亡率をみると「慢性閉塞性肺疾患(肺気腫と慢性気管支炎)」による死亡率が男女ともに1位と、全国で最も多いのです。特に男性は平均寿命のランキングが30位と低下しましたが、悪性新生物(癌)は全国で46位、心疾患は28位、脳血管疾患24位(脳梗塞は47位)で、沖縄県は都道府県別からみれば慢性閉塞性肺疾患による死亡が全国で最も多く大問題なのです。
 慢性閉塞性肺疾患は「死よりも恐ろしい病気」として知られ、喫煙(受動喫煙も含む)によって肺の破壊が進み息切れが生じる病気です。破壊された肺を修復するのは困難ですから、進行すると酸素吸入やリハビリが必要になります。食欲が低下して栄養失調による寝たきり状態になります。喫煙が原因の場合は発病するまでに20〜30年ほどかかるので、今後の県民の健康長寿のためには、今から早急な禁煙対策が必要。真っ先に取り組むべき課題です。

【ひと口30回噛んで食べましょう】
 早食いは肥満の原因です。よく噛まないで食べると脳が満腹を感じる前に食べすぎてしまいます。同じ食事でも、よく噛まないと体重が減りにくいのも事実です。食べ物を口に入れたら箸を置く、カレンダーの日付を目で追いながら30回噛むなどの工夫をして、よく噛んで食べる習慣を身につけてください。噛むだけで毎月1kgずつ減量に成功した人もいます。

【メタボ対策を見直しましょう】
 沖縄県でメタボや肥満が増えている原因は、炭水化物(糖質)の食べすぎです。穀物に多く含まれます。食べると腸でブドウ糖に変化して体内で利用されますが、余った分はすべて脂肪に変わります。これがヒトが太る仕組みです。砂糖も同じ糖質です。牛や豚に脂肪をつけて太らせる餌は穀物と草であり、肉や脂肪ではないのです。
 健診で指摘される中性脂肪や脂肪肝の本当の原因は、脂質ではなく糖質。血液中で余った糖質がすべて中性脂肪に変わり、肝臓や脂肪細胞に蓄えられ、脂肪肝や肥満の原因になります。
 糖尿病。2004年米国糖尿病学会は「糖質だけが血糖値を上昇させ、たんぱく質と脂質では上昇しない」と発表しました。血糖値の高い人は、動物性のたんぱく質と脂質(肉・卵・チーズ)を中心に食べて糖質(米・パン・ソバ)を控える食事をしてください。野菜では糖質の少ない島豆腐、島野菜(カンダバーなど葉野菜)をお勧めします。
 高血圧。動物性たんぱく質の不足も大きな原因です。全身や脳の血管もたんぱく質と脂質でできているので、肉をたっぷり食べると血管に弾力が戻り血圧が下がります。
 「ひと口30回噛んで食べる」「肉・卵・チーズを中心の食事で炭水化物を控える」。この二つを実行してください。さまざまな病気が改善します。肥満、脂肪肝、糖尿病、高血圧、脂質異常(コレステロールや中性脂肪)、高尿酸血症などをはじめ、腰や膝の痛み、不眠症、うつ病、アトピー性皮膚炎等の皮膚病、気管支喘息、喘息などに効果が期待できます。髪の艶も出て、顔色もよくなり、肌もきれいになります。考えも前向きになり、気持ちが明るくなります。
 本土型の食生活がヘルシーだという迷信に惑わされずに、伝統的な豚肉料理をたっぷり食べることが健康長寿復活の鍵なのです。