ではなぜ,熱傷治療業界は,誰が見てもどんぶり勘定の方法をそのまま使っているのだろうか。
それは,熱傷面積(%)を参考にして決めるのは輸液量くらいしかなく,しかも,正確な値がわからなくてもそれほど不都合がないからだ。
これは実際に計算してみるとよくわかる。現在,広く使われているParkland法(Baxter法)では
[一日の輸液量]=[体重(Kg)]×[熱傷面積(%)]×4と計算し,この半量を最初の8時間で点滴することになる。ここで患者の体重を体重50キロとすると,熱傷面積20%と25%での,最初の8時間の輸液量を計算すると,それぞれ250ml/hrと312ml/hrとなる。違うといえば違う量だが,臨床現場ではあまり違いはないのである。なぜかというと,実際の治療現場ではこの計算値は参考程度であって,尿量などを見ながら点滴速度をその都度,調整していくからだ。要するに,5%位の違いはどうでもよくなってしまう。
だから「9の法則」のような大雑把などんぶり勘定でも有用な数値となるのだ。くどいようだが,臨床医が知りたいのはその大雑把な受傷面積の値(%)なのだ。
(2011/07/01)