医学はどんぶり勘定を必要とする


 なんで,[体表面積(m2)=体重(kg)0.425×身長(cm)0.725×0.007184)]のようなどんぶり勘定でお茶を濁しているかというと,「なるべく正確な値は知りたいが,測定のための苦労はなるべくしたくない」という心理があるからだろう。人体は複雑な形状をしている立体であるため,体表面積を正確に測定するのは結構大変だからだ。頭で考えると幾つか方法はすぐに思い浮かぶが,どれもこれも「原理は簡単だが,実行するのは大変」なのだ。

 だけど,正確な体表面積を知らなければ治療できないから,何としても体表面積を知らなければいけない。そこで,「近似計算というズル」をしてしまうのだ。

 しかも,この近似式は標準体型であればそこそこ正しい値を出してくれるし,実際の臨床現場では「そこそこ正しい」程度で十分なことが多い(・・・と思う)。だから,これを利用しない手はないし,利用して手間を省いたほうが世のため人のため患者さんのためである。かくして「どんぶり勘定計算式」が重宝されるのだろう。

 しかも,どんぶり勘定だろうと正確に測定した値だろうと,いったん数字になってしまうと「数字」として処理することができ,統計処理に載せることができる。統計処理ができれば学会発表できるし,論文も書ける。要するに,「どんぶり勘定計算式は所詮はどんぶり勘定」ということを忘れてしまえば,すごく便利な存在なのである。

 問題は後述するように,「どんぶり勘定計算式」で数字を出した当の医者が,「どんぶり勘定で出した数字だ」ということをすぐに忘れてしまう点にある。

(2011/06/28)

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