このように考えると,コピーをするかどうかは,コピーの手間と値段,もとの商品の値段との兼ね合いで決まるような気がする。ここで「手間」の問題を考えてみよう。
例えば本のコピーだが,これは案外手間がかかる。1ページごとにコピーしないといけないからだ。つまり,ページを開いてコピー台に置き,強く押して「ページの間の黒い部分」がなるべくできないようにし,コピーをしたらまた本をひっくり返してページをめくり,ひっくり返して台に置き・・・という作業を延々としないと,本の丸ごとコピーはできない。200ページの本を丸ごとコピーしようとしたら,ものすごい手間である。
本を全ページ丸ごと自動コピー(本をコピー機にセットすると自動的にページを開いてはコピーしてくれる・・とかね)して,しかも製本までしてくれるコピー機が登場したら「本丸ごとコピー」をする人が増えるかもしれないが,現在のコピー機の機能では,本がよほど高くなければ丸ごとコピーをするメリットはない。
おまけに,コピーしたものは1枚ごとバラバラになっているから持ち歩くのも不便だし,読むのも不便。製本すれば厚さは元の本より倍くらい厚くなってしまう。とてもじゃないが,コピーした小説を読もうという気にはならないはずだ。これなら本を買ったほうがよほど安上がりだ。
そう考えると,音楽CDのリッピングとCD-Rへの書込みが,自動的丸ごとできるようになったことが,多くの人がコピーするようになった最大の理由だと思う。もしもCDからCD-Rへのコピーが1曲ごとにCDとCD-Rの入れ替えをしなければコピーできない仕様だったら,CDのコピーは広まらなかったはずだ。そんなに手間がかかるならCDを買った方が安上がりだからだ。
現時点ではDVDのコピーはできるものの簡単ではないし,動画ファイルのフォーマットがいろいろあって判りにくいという問題もある。同じDivXでもバージョンの違いで再生できたりできなかったりするし,Windows Media Playerで動画を再生しようとすると「コーデックがありません。見つけてインストールしてね」なんて素敵な警告がでたりする。私は同年代では結構パソコンなどを使っているほうだと思うし,ポータブルメディアプレーヤーをかなり使っているほうだと思うが,それでもいろいろな機器で動画を再生しようとすると本当に大変なのだ。
私は今のところ,iAUDIO A2-30-WH 30GB で映画DVDをコピーして移動車中で鑑賞していて,ファイルをハードディスクに入れているが,それだっていつまで再生できるかは不明である。そのファイルフォーマットがいつまで標準的に再生できるかわからないからだ。多分そのうち,動画再生ソフトのバージョンアップとともに「コーデックがありません」になるんだろうと思う。このあたりが,とりあえずMP3形式にしておけば大丈夫,という音楽CDとは話が違っている。また,上記の機器でコピーしたとしても,動画のサイズは640×480ドットなので,大画面で鑑賞するのに耐えないいう問題もある。
現在,1枚500円の映画DVDが売られているが,この値段と,現在の映画DVDをコピーする手間を考えると,コピーする人はまずいないだろう。つまり,映画DVDの私的複製が合法になったとしても,500円DVDをコピーする人はいないと思う。1冊500円の本を丸ごとコピーする人がいないのと同じ理屈だ。
(2007/11/)
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