コピーする・しないと,著作権に対する意識は別物


 私的範囲内ならコピーは可能,なんて法律論はさておいて,皆さんは本や雑誌をコピーしたことがあるでしょうか。多分,これまで一度もコピーしたことがないなんて人はいないと思う。
 では,あなたは本や雑誌のコピーを取る時に「これは指摘範囲での複製だから違法ではない」と考えながらコピーしただろうか。多分,意識していなかったと思う。


 ではちょっと問題。例えば,漫画雑誌を丸ごとコピーするだろうか。多分いないと思う。例えコピー代がただだとしてもしないだろう。だって300ページを丸ごとコピーするのは大変だから。その手間を考えたら雑誌を260円で買ったほうが安上がりだ。さらに,コピー用紙の方が雑誌の紙より厚いために,全ページをコピーしたら雑誌の倍くらいの厚さになってしまい,読むのも保存するのも大変である。というわけで,漫画雑誌も週刊誌もコピーするより買った方が安くて読みやすいという結論になり,コピーする人もいないということになる。ま,コピーするとしたら,気になった情報が載っているページだけだろう。

 では,1500円で250ページの小説本があるとして,それをコピーするだろうか。この場合も多分しないだろう。コピーではかさばるって重くなるために読みにくいからだ。また,コピー代が1枚10円だとすると,250ページだと1750円となりどう考えても本を買ったほうが安い。コピー代が1枚5円であってもコピーする手数を考えたら買った方が楽である。だから,小説本をコピーする人もほとんどいない。コピーするとしたらその本が絶版で入手困難な場合だろう。そういう本を必要としている人にとっては,手間も値段も関係ないからだ。


 では,3000円,100ページの専門書となるとどうだろうか。多分,コピーする人が出てくるだろう。コピー代やコピーの手間を考えても3000円なら十分にお釣りがくるからだ。まして,教授指定の教科書だけど単位さえ取ってしまえばもう不要になる,なんて本なら,ほとんどの人がコピーで済ませるはずだ。その本を所有している理由がないからだ。まして,医学書なんて10年もたてば内容が古くなるわけで,古い教科書は教科書のていをなしているが,実は教科書としての価値はほとんどゼロである。それならコピーでも十分であり,物としての教科書を所有している意味はあまりなくなる。

 では,1万円の医学書ならどうだろうか。誰もがコピーするだろうか・・・いえばそうならない。ページ数が絡んでくるからだ。100ページの本なら全ページコピーするのに対して時間がかからないが,800ページとなるとかなりの手間と時間がかかってしまう。また,症例や病理のカラー写真はやはり原本のほうがきれいだという事情も絡んでくる。そうなると本を買う必要がでてくる。

 一冊3000円の医学雑誌でも,読みたい論文が一つだけだったらその論文だけコピーするし,それが「最新治療特集号」だったら3000円だろうが5000円だろうが購入するだろう。その値段に見合う内容が書かれていて,コピーより読みやすく,持ちやすいからだ。


 このように,コピーするかしないかは,コピー代,本の値段,ページ数,書かれている内容などで決まってくるような気がする。漫画の本や週刊誌をコピーする人がほとんどいないのは,それらの読者が著作権を守っているからではないし,医学書や医学雑誌をコピーする人が多いのは,医者や医学生が著作権を守っていないからというわけでもない。コピーする,しないを決めているのは著作権に対する意識とは無関係なのである。


 なんでこんな話をふったか。CDのコピーとか楽譜のコピーの問題に深く絡んでくるからだ。

(2007/10/29)

 新しい創傷治療   なつい
キズとやけどのクリニック
 
 湿潤治療:医師リスト