《クライモリ Wrong Turn》 (2003年,アメリカ/ドイツ)


 何でもかんでも手当たり次第に人を殺しちゃう3人組殺人者軍団,それに襲われた若い男女6人(だったかな?)の恐怖を描いた映画です。ま,このような展開の映画,他にも沢山あるわけで珍しくありません。要するに《死霊のはらわた》,《蝋人形の館》系ですね。

 これらの同系統の映画を見慣れた人間からすると,この《クライモリ》は凡庸とは言わないまでも,特に褒める部分もなく,凄く怖いと言うわけでもなく,やはりありきたりだな,というのが正直な感想です。

 それにしても,この《クライモリ》という邦題,すごいですねぇ。最初,ラテン語か何かと思っていましたが,原題は "Wrong Turn",道,間違えちゃった,という感じの意味と思われ,一番最後のシーンでこのタイトルの意味が分かります。それはそれでいいのですが,《クライモリ》って何かというと「暗い森」を単にカタカナにしただけなんですよ。確かに「暗い森に迷い込んで殺されちゃった」という映画なんだけど,「クライモリ」ってのはないよな。


 若者グループが一人一人殺されていく恐怖映画は珍しくありませんが,これがアメリカ映画だと,「ドラッグとセックスしか頭にない馬鹿男」と「脳味噌空っぽでオッパイだけでかい馬鹿女」というのが犠牲者の相場で,ま,こいつらなら殺されても誰も困らないだろうな,という感じなんですが,この映画は違います。主人公は医学部の学生でこれから面接を受けにいこうとして近道を急いだだけだし,彼と合流する男女のグループもマリファナとか吸っているけど基本的には仲間思いのいい子ちゃんで仲間を助けるために自分が犠牲になったりする感心な連中です。何もこいつらが殺されなくても,という気がします。

 あとは,広大な森の中で迷った彼らが助けを求めようとようやく家を見つけるんだけど,誰もいない家の中で大量の人体のパーツのコレクションを見つけちゃって,逃げようとすると家の住人たちが戻ってきたりして,彼らに襲われて一人ずつ惨殺されたりして,何とか逃げ出したりして,それを追ってきたりして・・・と,この手の映画のお約束の展開が続きます。

 また,殺人鬼から逃れるための逃走シーンもちょっと変なところはあったけど(木の枝の上をあんなに歩けるのとか,木から木へどうやって移動したのとか,殺人鬼が下にいる木からどうやって無事に降りられたの,とか・・・),サスペンスと恐怖の連続はそこそこ平均点でしょう。グロいシーンはそれなりにグロいし,残虐シーンもちょっと淡泊だけど,ま,この程度なら及第点でしょう。


 ただ,最大の難点は,「結局この殺人鬼軍団って一体何だったの,殺す目的は何だったの」というのが全く説明されない点。映画の冒頭で切れ切れに,「血族結婚」「先天異常」「精神異常」という言葉と,受精卵やら細胞分裂の様子やら正中顔面裂の患者さんの写真やらが映し出されます。これだと,そっちの方の原因で精神に異常を来して殺人鬼になった,と説明したいんだな,となりますが,それはさすがに無理があるような気がします。何より,正中顔面裂などの体表先天異常の患者さんの顔を映して,これが大量殺人の犯人,というのはちょっとひどいなと思いますね。

 それと,空き地を埋め尽くす大量の車は全て,彼ら3人が殺してきた犠牲者のものなんですが,いくら広大な森とはいえ,その地域で森にドライブに行った人が次々に行方不明になっているのに問題になっていない,というのは不自然過ぎます。

 あと,この手のアメリカ映画には必ず,オッパイぽろりのお色気シーンが必ずありますが,この映画にはありません。タンクトップで臍出しお姉さんが登場しているのに変なところで生真面目ですので,そっち方面は期待しないように。


 ま,その程度の映画です。

(2007/03/01)

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