《エイリアンズ》 (2005年,イギリス)


 いやはや,すげえ映画を見ちゃったよ。エログロ・スプラッター・バイオレンス・馬鹿映画なんだけど,ヤケクソなエネルギーとパワーに満ち溢れていて,あれよあれよという間にわけのわからない感動に包まれたまま見終わりました。決して万人にお薦めできる映画じゃないし,かなり本格的なスプラッターシーンはあるし,冒頭からセックスシーンだし,「良識ある映画ファンは見ないでね」というしかないけれど,とにかくこのパワーとやる気には圧倒されました。

 おまけに,コミカルなシーンは思いっきりあるし,いろいろなSF映画のパロディーと思われるシーンもたっぷりだし,一瞬たりとも目を離せない面白さです。しかも,いろいろなところに小さな仕掛けをしてあって,それがきちんと生かされていて,それも見ていて気持ちよかったです。

 パワー溢れるお馬鹿映画ってのはいいねぇ。


 原題は "Evil Aliens",つまり,《極悪エイリアン》です。だから邦題も《エイリアンズ》でなく《極悪エイリアン》,あるいは《極悪エイリアン vs 狂乱ファイト地球人》として欲しかったです。


 舞台はウェールズの片田舎で,引き潮のときにだけ本土との道ができるという離れ小島で,古代遺跡のストーンヘンジで有名なところらしいです。ここに住むカップルが宇宙人に拉致されて,男は惨殺され,女はおなかにエイリアンの胎児を埋め込まれ,妊娠した状態で発見されます。一方,イギリスの放送局でミステリー専門番組があるんだけど,ヤラセばかりで視聴率が落ちる一方(納豆で痩せるなんて放送しちゃったりしてさ・・・)。そこで,その「宇宙人の子供を身ごもった女性」を出演させて視聴率を稼ごうとするわけね。

 で,この番組クルー,ディレクターの女性,キャスターの女性,音声係,カメラ係,男優さん,そしてコメンテイター役のUFOマニアのお兄ちゃんが島にやって来るわけね。こいつらが妊娠女性の家を尋ねるんだけど,突然,凶暴な男3人が登場! こいつらは実は妊娠女性の3人の兄なんだけど,話は通じないし(ウェールズ語しか話せなくって,英語と聞いたとたん,唾を吐きまくったりする),見るからに危なそう・・・というか,初めはこいつが「極悪エイリアン」じゃと思ったね。

 で,ここで何か起こりそうかなと思うと,いきなりエッチシーンになったりして,なんだ,そっち系の映画なの? と油断していると,そのあとは怒涛の展開! UFOは飛んでくるわ,キャトル・ミュートゥレーションはあるわ,ミステリーサークルは出現するわ,ストーンヘンジの謎が解明するわ,何でもありです。そして,飼っている牛をエイリアンが殺しているのを知った3人の農民兄弟が「オラたちの可愛いべこっこ(牛)を殺したやつは許さねぇだ」,「田舎もんだと馬鹿にすんでねぇ」と凶悪エイリアンに戦いを挑んじゃうのだ。この凶暴3人組,マジ,すごくて格好いいんだよ。


 巨大な鉈みたいなのを振り回すやつ,チェーンソーを振り回すやつ,そしてショットガンとボウガンでエイリアンどものをバシバシ殺しまくるやつ,すごいです。あっ,そうか,この3人組は《悪魔のいけにえ》一家のパロディーかな? 中でもショットガンおじさんが無茶苦茶強くてパワフルに暴れまくります。そして,このおじさんたちに触発されたのか,とても戦闘要員に見えなかった女性ディレクター(だったかな?)まで車を追ってくる小型UFO(?)をショットガンで次々打ち落としたり,エイリアンたちに囲まれて絶体絶命のところでは,電動草刈り機を振り回しては次々とエイリアンを肉片にしちゃう。もう万事この調子で,首は引っこ抜かれるわ,腕は引きちぎられるわ,胴体は上下真っ二つになるわ,車のフロントガラスは血の海になるわ,ここまで来るとぶっ飛んじゃって爽快ですよ。

 しかも,使い物にならないキャラだと思った奴がちょっと頑張ったり,糞尿タンクの中を逃げるカメラ係兄ちゃんをエイリアンが追ってきて,もう駄目かというところでライターに火をつけてエイリアンもろとも自爆したり,なんだか全員が格好いいんですよ。


 エイリアンのつくりがチープですが,そんなの気になりません。「エイリアンは地球の大気に弱い」という設定なのに,宇宙船の中に地球人が入っても大丈夫なのはなぜ,とかそういう矛盾もどうだっていいです。

 全編に満ちているヤケクソパワーとお下劣パワー,いい意味での大雑把さとさりげない繊細さのバランスが最高です。私はこういう映画,大好きです。あの「凶暴3人兄弟」を主人公にした映画も作って欲しいと思います。絶対に見ます!


 内容がアホでも馬鹿でもいいけど,とにかくパワフルな映画が見たいな,という人にはお勧めです。

(2007/01/22)

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