《ロボコン》 (2003年,日本)


 高等専門学校(高専)の甲子園といえばロボコン,すなわちロボットコンテストである。全国大会の様子が毎年NHKで放送されるが,独創的なアイディア,ロボットの見事な動きなど,毎回見ては感動している。こういうロボットを自分たちだけで作り上げてしまう学生ってすごいなと思うし,こんな高校生,大学生がいるんなら日本は当分大丈夫だな,なんて思ってしまう。

 そういうロボコンを題材にしたのがこの映画である。基本的には《シコふんじゃった!》,《ウォーターボーイズ》,《スウィング・ガールズ》,《リンダ リンダ リンダ》の世界と同じ。通常こういう映画はスポーツや芸術系の世界を舞台にすることが多いが,ここではロボコンという理系業界をテーマにしているところがちょっと目新しいだろうか。要するに「努力,友情,勝利」という少年ジャンプの世界である。

 ま,大体,こういう映画にははずれはないと思う。よほどのことがない限り,駄作になる要素がないからだ。この映画もその例に漏れず,大傑作とはいえないけれど,爽やかな感動を与えてくれる。

 このタイプの映画では,主人公がたまたま何かを始めることになり(例:相撲,シンクロ,ジャズ・・・),初めは嫌々ながらだったのに,次第にその魅力に惹き付けられて本気・熱血モードになり,感動のラストシーンを迎える,という構成になる。もちろんこの映画もその王道を歩んでいる。私はこういう映画,好きだな。


 でも最初に,映画としての気になった点を指摘する。主人公の女子生徒がロボコンに本気になるまでの心の動き,動機がちょっと弱い。それと,実際のロボットの制作の過程をもうちょっと描いて欲しかった。理系映画なんだから,ロボット工学とかそちらの方の説明がもうちょっとあった方がよかったと思う。
 さらに,第2ロボット部の顧問の先生と保健室の先生の恋愛は余計。あのベッドシーンはなくてもいいと思う。あそこだけ生臭くなっちゃった。


 でも,それ以外のシーンはどれもよかった。

 特に,ロボコン本番戦でちょうつがい部分が壊れたときに,ヤンキー風部員がいきなりポケットから自分の携帯電話を取り出してドリルで穴を開け,それで固定するシーンは最高! 重量オーバーにならないか,と気になるけど,大事な携帯電話を犠牲にしてまでロボットを動かしたいという彼の熱意に敬意を表しましょう。それまで「いい加減キャラ」だった彼だけど,こいつには熱い理系の血が流れていたのだよ。

 ライバル役の「徳山高専A」チームとの対戦で,Aチームが究極の箱の積み方をするんだけど,これが実にトリッキーで隙がないのだ。どう考えても,この箱を崩さずに箱を積み上げるのは不可能なんですよ。この箱の積み方をしたら負けないよ,と思って見ていると,なんとそれを破っちゃうのだ。これはすごいぞ。それまで駄目キャラだった部長がこの奇想天外な作戦を考案して指示するんだけど,格好よかったぞ。

 決勝戦も迫力があってよかった。段ボールの箱をあそこまでロボットで積み重ねるのは本当に大変だと思う。ちなみに,この映画で使われたロボットは,実際に高専の学生達が作ったものらしいが,あの「段ボール箱8段重ね」は何度見てもすごい。よく,崩さずに重ねたもんだ。

 そして何より,ヒロイン役の長澤まさみちゃんがすごくいい。実は私,アイドルには全く興味がないんで(・・・というより,アイドルに興味がある50男の方が怖いけど),全く予備知識なしにこの映画を見たのだが,ヒロイン役のあまりのうまさにびっくりし,改めて配役を確認し,初めてこの女の子が長澤まさみだと知った次第である。ま,それは別として,この映画のまさみちゃんの演技は感動ものである。


 できれば,もうちょっとロボット制作技術方面をしっかりと描いた《ロボコンⅡ》を作って欲しいと思う。そうしたら,安易な「努力,友情,勝利」パターンを超える作品になるはずだ。

(2006/10/06)

 

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