《蝋人形の館》 (2005年,アメリカ)


 短くまとめると,いかにもアメリカ映画,っていう感じの馬鹿兄ちゃん4人と馬鹿姉ちゃん2人が人気のない街に迷い込み,次々に殺されちゃうという,〔シリアルキラーが追いかけてくるよぉ〕+〔生きたまま蝋人形にされちゃうよぉ〕+〔首も指もちょん切られるよぉ,見ていて痛いよぉ〕+〔親の因果が子に報い,だよぉ〕+〔ちょっぴり謎解きもあるんだよぉ〕という映画です。この手の映画に慣れっこのわたし的にはそれほど怖くなかったですが,スプラッター・ホラー系に弱い人は見ない方がいいよ,くらいには怖くて気色悪い映画ですね。


 感心したのは,細部まで気合いを入れて作っていて,不自然なシーンとか説明不十分なシーンはほとんどない点です。謎めいた冒頭シーンもきちんときちんと説明されているし,登場する小道具もいろいろ凝っていました。もちろん,映画で登場(?)する蝋人形の出来も良く,十分に「生き人形」という感じで怖いです。殺人鬼となる兄弟の出生の秘密が,最後にヒロインが立てこもる部屋のドアをナイフで切り開くシーン,そして,殺人鬼兄弟が折り重なるシーンに結びつくなんて,唸ってしまいました。お見事です。

 また,最後の大炎上のシーンも迫力満点で,見ている方にも画面の熱さが伝わってきます。殺される6人が迷い込む街もきちんと作られていて,人っ子一人いない街の不気味さが十分に伝わってきます。


 ま,このタイプの映画はストーリーを説明してもしょうがないので,断片的な印象など。

 この手の映画に欠かせないのが,いかにも殺されそうな登場人物です。エッチとドラッグのことしか頭に入っていない頭空っぽのお兄ちゃんと,脳味噌空っぽだけどオッパイだけは大きいのよ,というお姉ちゃんが絶対に必要です。その点,この映画のお姉ちゃん二人は美人,そしてお兄ちゃんはイケメンです。そして,お馬鹿な順に殺されるのも見ていて安心できます。

 ヒロインの女友達役としてパリス・ヒルトンが出演しています。彼女2作目の映画出演だったでしょうか。もちろんこのパリスちゃん,アホなお騒がせセレブとして有名で,ボーイフレンドとの生エッチビデオが世界中に出回ってしまったお馬鹿姉ちゃんです。

 ちなみにパリスちゃん,恋人とテントで二人きりになると下着とジーンズを踊りながら脱いでブラとパンティになってくれます。いわゆるサービスシーンってやつです。パリスちゃんのこのストリップまがいの脱ぎっぷりは見事ですが,肝心の演技の方はまるで下手です。特に,ヒロイン役のお姉さんと比べると,演技の下手さ加減が際だちます。
 このパリスちゃん,前額部正中に木の棒が突き刺さされてそれが後頭部に抜け,絶命するというかなりグロイ殺され方をします。この殺され方のために出演したようなものです。

 そういえばパリスちゃんは「世界で最も過大評価されているセレブ」を決める投票で,見事トップの座に輝いた(?)というニュースがありましたが,さもありなん,という感じです。


 この手の映画では

「いかにも怪しげな屋敷がある」

「誰かいないんですかと声をかけても返事がない,あるいは,閉館中なんて札がかかっている」

「普通ならここで引き返すのに,構わず中に入るお馬鹿さんたち」

「奥の方で怪しげな物音が!」

「根拠もなしに,誰か脅かそうとしているんだぜ,俺たちをなめるんじゃねぇ,なんて言いながらさらに奥に奥にと進むお馬鹿さんたち」

「何かにつまづくと生首がごろり!」

「ぎゃああ,と叫んで振り返ると・・・」

というパターンが欠かせませんが,この映画でも忠実に踏襲されています。


 あるいは,

「殺人鬼をなんとか倒して,辛くも数人が助かる」

「ここで逃げ出せばいいのに,根拠もなしに,誰か生き残っているはずだ,と言い出す馬鹿1名出現」

「その馬鹿に引きずられて勇気を見せたがる付和雷同馬鹿」

「しょうがないので全員で引き返す」

「一人だと思った殺人鬼は実は二人いて・・・ぎゃああ!」

なんてパターンもありますが,この映画にもこれに似たパターンが見られます。


 あるいは,

「トイレに行きたくなる」

「怪しげな家がある」

「住人から,トイレはそこを右に行った突き当たりだよ,と教えられる」

「その手前に扉があるとなぜか入っちゃう馬鹿」

「そこには見てはならないものが・・・ぎゃああ!」

というパターンもありますね。もちろん,この映画にも登場します。

 というわけで,このタイプの映画に似た状況に置かれたら,とりあえず,ヤバイと思ったら近づかない,怪しげなところには近づかない,近づいても奥に入らない,引き返す勇気を持つ,トイレを借りたらそれ以外の部屋には入らない,という点を守った方がいいようですね。


 第1の犠牲者はアキレス腱を切られて動けなくなり,蝋人形制作工場(?)に連れ込まれますが,凶器は普通のハサミです。このタイプのハサミで切っても,皮膚は切れてもその下は滑ってしまい,アキレス腱までは切れません。というわけで,画像的には「痛い」凶器ですが,医学的には選択ミスですね。もう少しアキレス腱が切れるような凶器を選んで欲しかったです。

 蝋で固められた友人を発見して,その友人がまだ生きているのを発見して蝋を剥がそうとするシーンでは,皮膚に蝋がくっついちゃって蝋と一緒に皮膚が剥がれてくる,といういかにも痛そうなんですが,これは解剖学的にちょっと無理がありました。表情筋より下の筋層がいきなり露出していたからです。しかし,解剖学的に考えればどうでしょうか。蝋の溶ける温度が60℃くらいだったはずなので,真皮内に水疱形成がありそこで剥がれるはずです。
 ちなみにこのシーンで,まぶたを開けて眼球をきょろきょろ動かすことで意識があることが判る,という設定ですが,顔全体が蝋で覆われているのに,上眼瞼だけ蝋で固まっていないと言うのは,ちょっとおかしいです。


 というわけで,良質のホラー映画ですので,安心して(?)見られます。十分に「怖くて痛い」ですよ。

(2006/08/23)

 

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