《ヴァンパイアVSゾンビ》 (2004年,アメリカ)


 毎回のようにクズ映画,ウルトラB級映画を紹介していますが,この映画はストーリーのわからなさという点では他の追随を許しません。なにやらストーリーらしいのがあるのですが,それが何を意味しているシーンなのか,この登場人物は一体何なのかを一切説明せずに,それでいて画面だけはどんどん進んでしまうため,観客はほぼ完璧に置いてけぼりです。もしかしたら,映画を作っている側も,今,何のシーンを撮影しているのかがわかっていないかもしれません。ほとんど,「理解を拒絶している」映画です。

 おまけに,起きている事件をぶつ切りシーンで,しかも時間の前後関係をバラバラに映すもんだから,ルールのわからないゲーム,訳の分からない言葉で話される劇(それも会話だけで成り立っている劇)を延々と見せられている気分になります。


 タイトルもひどいです。ヴァンパイアらしいのは登場しますが,真っ昼間で車を運転しているし,日光,当たりまくっていますから,どうもヴァンパイアじゃないような感じです。おまけにゾンビらしいのは出てきますが,どう見てもゾンビでありません。

 さらに,こいつらが闘うわけでもありません。最後のところで,ヴァンパイアが一方的にゾンビに襲われて喰われちゃうだけです。だから,正確な映画のタイトルは《ヴァンパイラ(らしいの)とゾンビ(みたいなの)ですよ。


 最初に登場する父娘の父と携帯電話で連絡を取っている「将軍」の関係が全く不明。第一,「将軍」って何だ? あだ名か? 職業か? この父娘に謎の娘カミラが絡んで来るんだけど,この名前だけで正体バレバレ。で,父娘と将軍が向かう先が修道院なんだけど,なぜその修道院なのかが意味不明。

 ヴァンパイアは何かの伝染病らしいと説明されていて,それはそれでいいけど,ゾンビ(らしいの)についての説明は全くなし。結局こいつら,一体何だったのでしょうか。ゾンビでないことは確かなんだけど・・・。


 でもって,無意味な裸シーンがあるのもお約束。でも,後ろに死体(しかも首を鋸で切り落としたばかり)が転がっている車の中でレズるのはやめようね。

 何より駄目なのが,世界がどうなっているのかが全く描写されていない点。世界が伝染病で破滅しているのか,それと闘っているのか,ゾンビみたいなのが他にも蔓延しているのか,全く不明です。この父娘が運転する道路は対向車も来ないし,到着した修道院も街も人っ子一人いないし,一体,何がどうなっているのか,全く説明なし。人件費をケチりすぎるとこうなります。最低限必要な人間だけは登場させようね。


 ま,要するに,前後の脈絡なく撮影した裸シーン,モンドシーン(スプラッターシーンのこと),残酷シーン,その他の意味ありげなシーンを順不同でくっつけて,もっともらしいタイトルをでっち上げ,DVDジャケットに適当にもっともらしい絵を書いちゃえ,と作った映画なんじゃないでしょうか。
 普通なら,もうちょっと映画の筋書きとか,ツッコミを入れるんですが,あまりにも中身がないため,これ以上書くことがありません。その意味では,クズ映画中のクズ映画としてカルト的評価の高い《肉喰怪獣キラーツリー》《ジュラシック・ジョーズ》《案山子男2》よりもさらにひどいクズ映画です。

 ま,見るだけ時間の無駄だね。

(2006/06/27)

 

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