《キングスパイダー》 (2003年,アメリカ)


 アルバトロスの誇る馬鹿映画の一つです。内容も見所もありません。こういう映画を作ってしまった暴挙・蛮勇を褒めてあげましょう。

 映画の目的はしっかりしています。ハリウッドを壊すこと,それだけです。つまり,低予算でしょうもない笑われるだけの映画しか作れない連中が,予算を使いまくって豪華なクソ映画を作っているハリウッドに復讐しようと,この映画を作ったんですね。多分,次のような会話があったと思いますよ。

 というような,酒飲み話をもとに,勢いで作った映画と思われます。

 ちなみに原題は "Creepies",つまり「這い回る虫」という意味かな? この時点で,蜘蛛と違ってますけど,さすがはアルバトロス,全然気にしていません。


 えーとですね,映画のストーリーをまとめるのも馬鹿ですが,何とかまとめてみますね。

 アメリカ軍の研究者がですね,殺人兵器に使おう,ってんで蜘蛛を巨大化する研究をしています。ガラス瓶みたいなのに入れてあるんだけど,馬鹿兵士君がガラス瓶を落としちゃって,蜘蛛がこいつが逃げちゃう。すると,瞬く間に増えちゃって,基地を壊滅させちゃう。この蜘蛛,せいぜい20センチくらいなのですが,なぜか蜘蛛君たちが合体して巨大蜘蛛になり(お前ら,合体ロボか?),ハリウッドの町中に逃げ出して,ビルを登ったり,橋を壊したりと大暴れ。でもって,その蜘蛛の開発者が戦車に乗って蜘蛛退治に来るんだけど,蜘蛛がすばしこいのか,狙いが下手なのか,ハリウッドの町中をロケットランチャーでバシバシ壊しちゃう。蜘蛛が破壊したんだか,開発者が街を破壊したんだか,微妙なところです。

 一方,研究用蜘蛛が入っている荷物がなんかの手違いで,どっかの町の中の貸しスタジオに運ばれちゃう。そこにはしっかりと「陸軍 機密兵器」とか書かれているのに,連絡もせずに倉庫に保管しちゃう。そして,馬鹿兄ちゃんがその箱を壊しちゃって(壊しちゃいけないものを壊すのはお約束,ってか?),貸しスタジオの倉庫は蜘蛛で一杯。そして排気口を通って外にも出ちゃう。

 で,この貸しスタジオで録音しようとやってきた3人組の姉ちゃんバンドがスタジオに入っちゃって,蜘蛛から逃げようと右往左往。次々犠牲になっちゃう。

 で,最後はどうしようもなくなり,蜘蛛開発者が持ってきたアタッシュケースに入れた原爆が爆発し(というか,ライフルでアタッシュケースを誤写したら原爆が爆発!),ロサンゼルスは壊滅しましたとさ,という映画です。


 ま,なんといいますか,破壊的に意味のないストーリーと,無駄なエピソードが連続します。

 まず,全てが哀しくなるほどチープです。最初の基地はどこかの基地を外から撮影した物と思われますが,それ以後はどっかの倉庫で撮影したことが明らか。基地なんですが,部屋は二つくらいしかありません。同じ場所が何度も映されます。

 後半,舞台になる貸しスタジオも部屋が3つくらいしかなくて,全員,同じところをぐるぐる回っているだけです。一人が蜘蛛に咬まれて死にそうだと言うのに,外に連絡を取ろうと言い出す人もいないし,外に出る出口を探して外に出ようと言う人もいません。意地でも外に出ないように工夫しています。涙が出ます。

 ハリウッドの町に出現した巨大蜘蛛をヘリで攻撃しますが,実写のヘリはどう見ても普通のヘリですが,一方,ミサイルを発射するヘリはプラモデル(しかも出来が悪い)と思われます。どうやら,プラモデルを糸で吊って撮影した模様です。

 軍事基地というのに兵士は3人くらいしかいないし,蜘蛛を退治に戦車に乗り込むのは2人だけだし,ヘリは3台しか使用していません。人手不足,という言葉が頭をよぎります。


 蜘蛛にロケットランチャーを打ち込みますが,これは単なる筒です。「弾を込めろ」というシーンでは,向こう側が穴を通して見えちゃいます。段ボールで作った筒だって,ロケットランチャーだと思えばロケットランチャーなんです。みんなで協力してあげましょう。

 ハリウッドを巨大蜘蛛が襲うシーンも開き直って撮影しています。手抜きで作ったジオラマ(多分,大して大きくない)にゴムの蜘蛛オモチャを置いて糸で吊り上げます。ジオラマの中を戦車のオモチャがチョコチョコ走り回りますが,これはどう見ても安物のラジコンです。そして,爆破シーンはどう見ても爆竹です。爆竹の爆発を見てびっくりしてあげましょう。

 このシーンと交互に,町が破壊されて逃げまどう人や車が映されます。これは迫力があるんですが,これはどうやら,火事か爆発事故の現場を伝えるニュース映画(あるいは家庭用ビデオで撮影したもの?)をそのまま流用した物と思われます。それを性懲りもなく,何度も繰り返します。同じ画像を何度も見せてくれます。腹が立ってきますが,ここは我慢してあげるのが大人ってものです。


 おまけに,蜘蛛の形が全てバラバラ。床を這い回って近づいてくる奴は,どう見ても蜘蛛ではなくダニかテントウムシです。それから,他の蜘蛛に指令を出していると思われる奴は,蜘蛛は蜘蛛でもハエトリグモ,あるいはカニムシ(これを知っていたら,かなりの節足動物オタクですね)です。そして,巨大化してハリウッドの町中を飛び跳ねる奴は巨大タランチュラです。金がないのはわかるけど,せめて蜘蛛の模型くらいは同じ形の物を揃えて欲しかったです。ゴムの蜘蛛オモチャすら買えなかったのかもしれません。

 戦車に二人が乗り込みますが,ハンドルがまるで自転車のハンドルです。プレイステーションのオプションで売っているハンドルより安っぽいです。もしかしたら,あの戦車は,ペダルをこいで動かす「人力戦車」なのかもしれません。


 そうそう,ハリウッドの町中をはね回る巨大蜘蛛にこの二人が攻撃をするんですが,攻撃開始の前の会話がナイスです。

 おいおい,これで納得しちゃうの?

(2006/06/07)

 

 新しい創傷治療   なつい
キズとやけどのクリニック
 
 湿潤治療:医師リスト