『異常犯罪捜査官 Blond: Eva Blond!』(2002年,ドイツ)


 タイトルそのままの異常連続殺人事件を女性刑事が解決する,という内容です。調べてみると,どうもテレビ用に作られた映画のようですが詳細は不明。常識的には,こういうタイトルを単発のドラマにはつけないでしょうから,連続ドラマかもしれません。

 で,結論から先に書くと,面白いんだか面白くないんだか,すごく微妙なラインの映画です。「面白くないわけではございませんが,これを積極的に面白いと断言するに足るものがあるかと申されても困りますし,面白くないということを否定しないわけでもございません,と申し上げる次第です。作品としての完成度が高いかといわれましても,これより完成度が低い映画があることも事実ですし・・・」という,お役人用語による政府答弁みたいな言い方になってしまいます。

 ま,「見る価値はありますか?」と問われれば,「見る価値なし!」と答えちゃいますけどね。


 殺し方は従来にない殺し方かな? 合成樹脂(接着剤?)を使って殺すんだけど,これは新機軸でしょう。しかし冷静に考えてみると,接着剤を殺人現場に持ち込むだけで大変だろうなぁ,と思います。何しろ全身を固めるんだから,必要な樹脂だけで数10キロは必要でしょう。それを毎回持ち込むんだから,この犯人は力持ちです。その馬鹿力,他の分野で生かして欲しいものです。いずれにしても,かなり面倒な殺し方をしています。

 この映画は「舞台関係者連続殺人事件」です。最初,有名舞台歌手(というのかな?)の死体が見つかるんだけど,これが全身を樹脂(接着剤)で固められているのです。そして次が舞台評論家の男。これも口の中に接着剤を流し込まれて殺されています。その後さらに数体,接着剤で固められた犠牲者が見つかるんだったかな。で,この事件を担当する女刑事がちょっとした手がかりをもとに犯人を探り出し,それに迫って行くんだけど,推理ものとしては普通の出来です。


 一方,ツッコミどころはいくらでもあります。まず,いろいろな登場人物のそれぞれのエピソード(行動)が描かれていますが,それらとこの映画のストーリーが全く無関係。何かの伏線にでもなるのかな,とか,事件解決の糸口になったりするのかな,とか思って最後まで見たんだけど,全く関係ありません。だったらこういう意味ありげなシーンは不要です。なら,削れよ!

 たとえば,女刑事の夫は考古学者という設定ですが,考古学者でなければいけないと言う必然性はありません。というか,そもそも彼女の旦那がこの映画に登場する必然性すらありません。なら,出すなよ。

 あと,彼女の同僚の刑事の性格も異常です。同棲しているガールフレンドが「あなたの車に乗せて」と言っただけで彼女のアパートを飛び出しちゃう。「車キ○ガイ」という設定らしいですが,これでは単なる「キ○ガイ」です。こいつ,何考えているんでしょうか。って言うか,こういう設定にする必然性,皆無です。

 同様に,主人公の同僚の女性(警察の資料係とかやっているのかな?)は,常に胸元を広く露出させる服を着て仕事しています。胸の谷間,見えまくりです。グラビアアイドル気取りなんでしょうか,それとも叶姉妹の真似をしているのでしょうか。こういう奴を野放しにして署内の風紀が乱れます。なぜ,取り締まらないのでしょうか・・・と思っていたら,やはり後半,署内で風紀が乱れるシーンが・・・。このシーンも前後の脈絡なし。単に発情しただけのようです。発情期だった模様です。なら,このシーン,削れよ!


 そういえば,冒頭の舞台稽古をしているシーンで登場する女性がいるんだけど,こいつが登場してしゃべったとたんに,「こいつは男だ」ってすぐにばれちゃいます。だって,体がゴツ過ぎるし,顔の形(顎とか)も「女装した男」だし,元々の映画の声も吹き替えの声もしっかりと男です。こいつを女だと思うほうがおかしいです。それくらい不自然な女装姿です。
 後半,こいつが男を誘って殺しちゃうんだけど,誰が見たって女装男なのに,ひっかかる男って,おかしくない? それとも,「女装している男」が好きな男だったの? それはそれで十分濃すぎる設定だけど・・・。

 それと,犯人の秘密を握る日記を見つけるシーン。犯人がこの日記を取り戻しに帰ってくる,と判っているなら,さっさとその日記を持って逃げ出すか,どこかで外で見張るとか,女刑事さん,頭使えよ。犯人の部屋で日記を読みふけるから犯人に銃を突きつけられるんだよ。はっきりいってアホです。無防備すぎます。

 最期の犯人との対決シーンも,「これでおしまい? そんなのあり? こんなんで犯人が捕まっちゃうの?」と拍子抜けでした。はっきりいって脱力しました。


 ゴチャゴチャしたわけのわからない脱力を体験したい人には,この映画をお勧めします。


 と,ここまで書いて気がつきました。これは「異常犯罪の捜査官」じゃなくて,「異常な犯罪捜査官」を描いた映画だったんだ! きっとそうだ。

(2006/02/02)

 

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