これは,かなり真面目なB級パニック映画であり,現在,人間世界を脅かしている鳥インフルエンザの人への感染を予言しているかのような映画である(制作は2003年)。
カリブ海に浮かぶ南海の楽園のような島で,一人の島民が暴れるニワトリに指をつつかれて出血するシーンから始まる。彼はまもなく高熱を出し,咳が続き,病院に収容されるがどんな治療も効かず,数日後に死んでしまう。
たまたまバカンスでこの島を訪れていた女性医師(感染症が専門だったかな?)が異常に気付き,それが新型のウィルス感染ではないかと疑いCDCに連絡する。かくして島は封鎖され,CDCが島に入って調査開始となるが,患者は次第に増えていくのに有効な治療法は見つからない。次第に死者が増え,島民の間で不安と不満が広がり,ついに脱走を企てる島民が現れ(これは海軍が阻止),CDC職員に暴行するものまで現れる(このため,CDCは一時,島から逃れようとする)。
有効な治療法が見つからなければ,島民全てが犠牲になる。しかしその島にこの新しいウイルス感染症を封じ込められなければ,感染はキューバ,そしてアメリカ,そして世界中に広がってしまう。そのタイムリミットは刻々と迫ってくる。
その極限状態の中で女性医師は,この病気に罹患したのに自然に治癒した人を見つける。つまり,彼は自力で抗体を作ったのだ。彼の血液があれば島民を助けられる。彼女は彼に採血を申し出るが,宗教上の理由で拒否される。しかし,彼から血液(=抗体)を提供してもらわなければ島は全滅だ。必死の説得で採血ができ,血液の入ったバッグを病院に運ぼうとしたその時,自分だけ助かろうとする島民が銃を構えていた。そして彼は銃を発射する。
こんな映画だが,医学的にはいい加減な部分はあまりないように思われた。何より,新しいウィルス疾患が発生した場合にそれがどのようにして地域で広がり,やがてパンデミックになるのか,パンデミックになるのを防ぐためにはどうしたらいいのかを,かなり正確に描いているように思う。もしかしたら,CDCも協力していたりして・・・。
この映画のように,小さな島で新たなウイルス性疾患が発生した場合の対処は,基本的には海岸線の封鎖で事足りる。しかし,現在のトルコや中国のように,大陸の一部で鳥インフルエンザの人への感染が起こり,それが人から人への感染となった場合,その封じ込めは困難を極めることになる。この映画はハッピーエンドで終わるが(このくらいはバラしてもいいよね),それはあくまでも孤島を舞台にしているからかもしれない。この映画と同じ病気が南海の孤島でなく,ロシアや中国で起きてしまったら,どういうことになるのだろうか。これは決して絵空事ではないだけに,ぞっとしてしまう。
(2006/01/16)
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