今,一番目が離せない漫画がこれだろう。何しろ,「勉強なんてウザったいし~」という高校生をたった一年で東大に合格させる,という作品だ。もちろんギャグ漫画じゃなく,極めてシリアスな作品だ。
しかもこの漫画の中で明かされる勉強法が理に適っていて唸らされてしまう。「数学はスポーツでありゲームだ」「英語はビートルズの歌を歌いながら覚えるのが効果的」「点数を稼ぐなら古文」「古文攻略にはまず漫画を読め」「物理は覚えなければいけない公式が一番少ない」なんていう秘法(?)が次々明かされるのだから,中学生,高校生は取りあえずこの本を書店で立ち読みして損はないと思うぞ。
この作品で面白いのは,徹底して戦略論,戦術論が展開されている点だと思う。つまり,経営が破綻状態にある三流高校(当然,偏差値超低空飛行の生徒しか集まらない)の経営を立て直すためにはどうしたらいいのか,という命題があるとき,
という具合に,目標をまず定め,それを実現するための最善の戦略を練り,必要な人員を配置し,最適のシステムを構築し,個々の教科の勉強法を工夫し(これが戦術だな)・・・と,徹底的に合理的に組みたてていくのだ。
とはいっても,教える相手は碌に机に座って勉強した事がない高校3年生二人だ。どちらも中学1年の頃から勉強がわからなくなっている典型的な落ちこぼれ。そこで二人に,東大に合格する事でどういうメリットがあるのかを説明し,合わせて,教師の側にどういうメリットがあるのかを包み隠さずに教えるのだ。決して,「お前の将来の事を思って勉強しろといっているのだ」なんてことは言わないのだ。利害が一致しているんだから,協力してくれ,という提案ですね。
要するに,彼らを対等の人間として遇しているわけである。
そして,「社会のルールは頭のいいやつが作り,頭のいいやつに都合がいいようにルールを作っている。逆に都合の悪いところはわからないように隠している。頭を使うのを面倒がっているやつは一生騙されるようになっているんだ。それが社会のシステムだ」と生徒に示す。「お前ら,一生騙されて損したくなかったら,勉強するしかないんだ」と,結論付ける。
これも見事な戦略論である。
教師は進学志望の二人の生徒に中学程度の数学の問題を繰り返し解かせることで,自分はやればできるんだ,という事に気付かせる。生まれて初めて数学で100点を取った女子生徒の顔の輝きが感動的だ。
受験のマニュアル本として読んでも,教育論として読んでも,そして戦略論として読んでも面白い漫画だと思う。何より,「この問題を突き詰めて考えれば,こういう方法論になるはずだ」という徹底的な演繹的思考が私の波長に合っている。
(2004/01/26)
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