『数学をつくった人々Ⅱ』(E.T. ベル,ハヤカワ文庫)


 私,昔は数学小僧だった(もちろん過去完了形だよ)。今ではもう,三角関数どころか2次方程式を解けるかどうかも怪しいくらいだが(使わない知識はすぐに忘れちゃうようにできているのだよ,人間の脳味噌ってさ・・・),数学や数学者についての本を読むのは依然として大好きである。

 本書は1937年に発行された古典的名著で,1997年に日本でも翻訳が出版され,つい最近,3分冊の文庫として刊行されたもの。私が手にいれたのは第2巻で,ここでは19世紀の数学の天才たち(ポンスレ,ガウス,コーシー,ロバチェフスキー,アーベル,ヤコービ,ハミルトン,ガロア,ケイリー,シルベスタ)が扱われている。既に知っている人もいれば,はじめて知る人物もいるが,今回,一番興味が惹かれたのがシルベスタという数学者だ。

 ケイリーとともに不変式の理論と行列の理論を完成させた人物らしい。で,不変式というのは全然理解できなかったが,相対性理論を作り上げる上で不可欠の数学的手段を提供しているのが不変式らしい。

 そして人間としては不屈の闘士であり,実生活においても世間の理不尽さと戦い続けた人物である。そして56歳の時に一度「定年になった」という無茶苦茶な理由で退職させられるが(もちろん彼は大学の詐欺師連中を相手に戦い,ついに年金を全額支払わせた),62歳で再び,ジョーンズ・ホプキンス大学から教授として迎えられ,さらに先進的な多くの仕事をして,なんと80歳まで教授として研究と教育に携わるのだ。

 そして美しくも感動的な文章が書ける人で,数学に対する情熱を伝え,人々に数学への興味を抱かせる能力があったという。本の中で引用されている彼の文章は教養の深さと数学への愛,尽きることのない情熱に溢れていて,実にすばらしいと思う。

(2003/10/20)

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