『スポーツマンガの身体』(齋藤 孝,文春新書)
 著者の齋藤孝はいうまでもなく『声に出して読みたい日本語』の著者。
 さて,この『スポーツマンガ・・・』は面白いよ。取り上げている作品は『巨人の星』『あしたのジョー』『スラムダンク』『バガボンド』『バタアシ金魚』『奈緒子』『ピンポン』の7作品。いずれもスポーツマンガの名作中の名作。これを作品中で「身体」がどのように描かれ,捉えられているかを論じている。まず,この着想がいい。そして,著者の齋藤氏にスポーツ経験があり,それを通じて「スポーツをする身体」論を自分のものとして読み変えている。その中で,これらの作品の中の場面を取り上げて,作中人物の肉体がどのように動いているのか,その動きはどのようにして実現されているのかを説明している。
 そして『バガボンド』では武蔵や小次郎が周囲に張り巡らす野性の感,殺気を感じる能力を極めてリアルに絵として描き出す様を取り上げて,この彼らの肉体の「大きさ」を説明し,『ピンポン』ではペコやスマイル,ドラゴンたちが高速で飛び交う玉を打ち合う事で会話し,飛翔し,開放されている様子を見事に説明している。

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