謎とき 日本合戦史(鈴木眞哉 講談社現代新書)
これも面白かったなぁ。まさしく「目ウロコ本」。「歴史・常識の嘘」をことごとく指摘し,論破していく様はまさに爽快。 源平の合戦から第二次世界大戦までの日本人の戦争の仕方について,膨大な資料から詳細に論じた本。

日本での合戦というと,刀を交えてのチャンバラを想像しがちだが,これがトンデモナイ間違い。「今昔物語」を見ても「平家物語」を見ても,その死傷者の9割以上は弓矢によるもので,刀傷は極めて少数。何しろ,刀傷より石礫(いしつぶて)による傷の方が多いのだから・・・。
常識的に考えても,刀を交える合戦では相手をやっつける状態では自分もやられる確率が高い。自分がやられるのは嫌だから,どうしても「遠くから相手を殺す」方法を考えるのが人情というもの。となると,刀よりは槍,槍よりは石礫,石礫よりは弓矢,弓矢よりは鉄砲・・・というのが当たり前。もちろん,戦国時代でも合戦といえば鉄砲と弓矢が主流であり,刀を交えての戦いは討ち死に覚悟の場合にしか起こらなかった。

それが,「戦といえば刀を交えてのチャンチャンバラバラ」が一般的「常識」になったのは,江戸時代で平和な時代になってから。要するに,講談師たちが「見てきたような嘘」で面白おかしく戦を語るようになってかららしい。平和ボケしてしまい,本当の戦いを忘れたからこそ,架空のお伽噺としての「戦国の合戦」がでっち上げられたってわけ。
同様に,一般には「長篠の戦における信長鉄砲隊の三段撃ちは戦術革命」といわれているが,これも嘘。「三段撃ち」を実際にやろうとすると,十分な数の銃を持ったよく訓練された兵士が必要で,しかもこれらの多数の兵士がスムーズ交替して打つためにはかなり広い空間が必要だが(常識的に考えてもそうだな),信長が集めた兵士は寄せ集めで訓練はしていないし,合戦の場を見ても,兵士がスムーズに交代するだけの空間はないというのだ。

そしてこの本では,「大和魂がこもる日本刀を振りかざせば,B29など退散する」という日本陸軍のトンデモ戦術にまで言及し,「この国は軍国主義国家ですらなかった。軍国主義なら勝つための戦術を考えるのに,それすらしていなかったからだ。つまり当時の日本は,戦術のない単なる好戦国家に過ぎなかった」と看破してみせる。

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